富士山での遭難対策として、静岡、山梨両県がヘリコプターによる救助の有料化を検討している。両県知事がそれぞれの会見で、連携して議論を深めたいと意欲を示した。
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4月中旬ごろの富士山。中腹より上は雪に覆われ、危険な状況だ=山梨県富士吉田市

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富士山での遭難対策として、静岡、山梨両県がヘリコプターによる救助の有料化を検討している。両県知事がそれぞれの会見で、連携して議論を深めたいと意欲を示した。

富士山では、閉山期間中にもかかわらず軽装備で登山し、遭難する事故が相次いでいる。無謀な登山を思いとどまらせる上でも救助費用を一部負担させる措置は妥当だ。両県は対象エリアや負担額などを協議し、有料化を実現してもらいたい。

山梨県の消防防災ヘリ「あかふじ」(渡辺浩撮影)

両県が検討を始めたきっかけは、中国人の大学生が4月、富士山で2回も遭難したことだ。1回目は山頂付近で動けなくなり、山梨県の防災ヘリが救助した。だが大学生は4日後、山頂にスマートフォンなどを置き忘れたとして再び登山し、今度は静岡県警の山岳遭難救助隊に助け出された。

このほか5月にも別の中国人男性2人が一時動けなくなり、自力で下山したものの救助隊が出動する事態となった。

富士山は6月でも残雪や強風などで遭難のリスクが極めて高い。このため一般の登山者が山頂まで登れる期間は7月上旬~9月上旬と定められ、それ以外は登山道が閉鎖されている。

閉山期間中は救助も困難だ。多大な労力と費用がかかる上、突風などで二次災害の危険もある。非常識な登山が相次ぐ中、地元自治体が自己負担を求めるのは当然だろう。遭難すれば相応の費用がかかると認知されれば、抑止効果が期待できる。

富士山入山規制のリハーサル。誘導員(左)が軽装者に登山断念を要請した=2024年6月19日、山梨県富士吉田市(平尾孝撮影)

もともと山岳遭難では、民間による有料のヘリ救助が一般的だった。数十万~数百万円の費用がかかるため、山岳保険への加入が推奨されてきた。

しかし阪神大震災以降、自治体の防災ヘリや警察ヘリの配備が進み、公的救助が中心となった。原則無料であり、安易な救助要請が目立つようになったとの指摘もある。

全国では埼玉県が平成30年から、一部山岳地帯で防災ヘリによる救助が行われた場合、5分ごとに燃料費相当の5千円(昨年4月からは8千円)を徴収する条例を定めて実施している。富士山でも参考になろう。

有料化の実現とともに、登山者のモラル向上が必要だ。遭難すれば自分の命が危ないだけではない。救助にあたる関係者にも危険が伴うことを、肝に銘ずべきだ。

2025年6月11日付産経新聞【主張】を転載しています

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