
春闘の集中回答日を迎え、各社の回答状況などについて会見する金属労協の金子晃浩議長(中央)ら=3月12日午後、東京都中央区(斉藤佳憲撮影)
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物価高騰が続く中で日本経済が成長軌道を取り戻すには、高水準の賃上げを継続することが欠かせない。そのための順当な結果といえるだろう。
今年の春闘は3月12日に自動車や電機などの主要企業の回答が一斉に行われ、トヨタ自動車など多くの企業が昨年に続いて過去最高水準の賃上げを回答した。イオングループがパート従業員の時給を7%超引き上げるなど、非正規社員の待遇を改善する動きも広がっている。
高水準の賃上げを継続した経営側の姿勢を歓迎する。この流れを今後、労使交渉が本格化する中小企業に波及させたい。

物価変動を考慮した実質賃金の伸びは、いまなお安定的なプラスを果たせずにいる。コメの価格上昇もあり物価高騰は収まる気配がない。こうした中で日本経済の閉塞(へいそく)感を払拭するには、雇用の7割を占める中小企業に賃上げを定着させることが重要となる。
連合は今春闘の賃上げ目標を昨年と同水準となる「5%以上」に据え置いたが、中小企業については「6%以上」とした。昨春闘の賃上げで大手との格差が広がったためだ。
中小企業が人手を確保するには、業績が改善していなくても賃上げせざるを得ない状況にある。生産性向上などの自助努力によって業績改善に努め、賃上げ原資を確保する必要があるのは当然だ。

一方、発注側の大企業も取引条件の見直しに努めてほしい。中小企業が持続的な賃上げを実現するには、上昇したコストを取引価格に適正に転嫁することが欠かせない。上場企業は4年連続で過去最高益を更新する見通しとなっており、中小企業の求めに応じて取引価格を見直す原資は十分にあるはずだ。
政府は、発注側の大企業が受注側の中小企業と協議せずに取引価格を決めることを禁じるなどとした下請法改正案を閣議決定した。賃上げを中小企業にも広げるには、政府による取引状況の監視を強めることも求められる。
トランプ米大統領の関税政策によって景気の先行きに懸念があるのは確かだが、だからこそ賃上げを中小企業にも波及させ、個人消費を活性化することが重要となる。賃上げの勢いが鈍れば、経済の再生が遠のくことを改めて銘記すべきだ。
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2025年3月13日付産経新聞【主張】を転載しています
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