東京大空襲から3月10日で80年。二度と惨禍を繰り返さないため何をすべきかを真剣に考えなければならない。
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空襲で焼け野原になった東京=昭和20年(1945年)

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東京大空襲から3月10日で80年がたった。

神田や浅草など東京の下町一帯が焼き尽くされ、約10万人もが犠牲になった。どれほど苦しかったか。心から冥福を祈りたい。

それとともに、二度と惨禍を繰り返さないため何をすべきかを真剣に考えなければならない。

昭和20年3月10日未明、東京上空に300機以上の米爆撃機B29が襲来し、約1600トンもの焼夷弾(しょういだん)を投下した。無差別の爆撃によって当時の東京区部の3分の1以上が焼失し、100万人以上が被災した。

米爆撃機B29

先の大戦で、米軍の日本本土への空襲が本格化したのは19年秋以降である。当初は軍事施設を狙う精密爆撃が中心だったが、東京大空襲以降、米軍は日本の防空態勢が脆弱(ぜいじゃく)であることにつけ込み、夜間に低高度から都市部の住宅密集地を爆撃するようになった。

20年3月12、19日には名古屋大空襲、13~14日には大阪大空襲、17日には神戸大空襲があり、8月の終戦までに全国の主要都市が空襲にさらされた。広島と長崎への原爆投下と合わせ50万人以上が亡くなった。

非戦闘員への攻撃は戦争犯罪で許されないが、戦勝国の米国が裁かれることはなかった。

講和を経て米国は今、唯一の同盟国で友好関係にある。それは極めて大切なことだが、日本人は、非人道的な空襲の歴史は知っておくべきである。

空からの脅威は21世紀の現代も存在している。日本がいくら平和を望んでも、攻撃を受ける恐れが消え去ることはない。

キエフの防空壕に集まった人々。日本も、外交、防衛力の強化とともに有事に備え、シェルターの整備が求められている(ロイター=共同)

ウクライナでは今も、ロシア軍によるミサイルやドローン(無人機)、航空機による攻撃が続いている。軍人はいうに及ばず、子供を含む多数の民間人まで犠牲になっている。

日本の周囲では、北朝鮮が弾道ミサイル発射を繰り返している。中国は核弾頭やミサイル、ドローンを増強している。

日本政府は昨年、台湾有事などを念頭にシェルター(避難施設、防空壕(ごう))整備の基本方針をまとめた。だが、欧州や韓国、台湾と比べ、日本はシェルター整備が大きく遅れている。

国民保護の態勢が整っていれば、侵略国は日本の抵抗力が高いとみて攻撃は不得策と考えるかもしれない。平和を追求する外交、防衛力の強化とともにシェルター整備を進めたい。

2025年3月9日付産経新聞【主張】を、一部情報を更新して転載しています

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