
サウジアラビア西部ジッダで会談した米国のルビオ国務長官(右)とウクライナのイエルマーク大統領府長官=3月11日(ロイター)
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サウジアラビアで開かれた米国とウクライナの高官級会合で、ウクライナは「ロシアとの30日間の停戦」という米国の提案に同意した。米国が停止した軍事支援と機密情報共有は再開された。
侵略戦争を続けるプーチン露大統領は停戦案を無条件で受け入れなければならない。
トランプ米大統領は停戦の見通しを「ロシア次第だ」と語り、「ロシアに圧力をかけることもできる」と述べた。米国は、プーチン氏が停戦案に同意するまで、ウクライナへの軍事支援とロシアへの制裁を強化するなど、あらゆる圧力を加えるべきである。
ウクライナ軍が一部を占領する露西部クルスク州で、露軍は奇襲に成功した。ウクライナ軍が同州から撤退を余儀なくされれば、同国は交渉の重要なカードを失ってしまう。

プーチン氏の侵略目標は一貫している。ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を永続的に断ち(中立化)、軍の規模を最低限度にとどめ(非軍事化)、反露政策を放棄させる(非ナチ化)ものだ。
停戦にはこれらの要求に加え、ロシアが一方的に併合を宣言したクリミア半島や東・南部4州の領有を認めることが必要条件だと主張する。
だが、ロシアも兵力不足や経済低迷に苦しむ。プーチン氏は自らの強欲さをひっこめて、停戦案に即座に応じるべきだ。
戦争終結を公約とするトランプ氏はプーチン氏に宥和(ゆうわ)姿勢をとってきた。反対にゼレンスキー大統領には、口論の末に決裂した首脳会談の後、軍事支援を停止する懲罰を科した。
ウクライナは対米関係の修復を急がざるを得ず、ロシアの再侵略を防ぐために不可欠な「安全の保証」に直接言及しない米国の停戦案を受け入れた。苦渋の譲歩である。
米国はウクライナにこれ以上の譲歩を迫ってはならない。ウクライナへの軍事支援を極大化して戦場での挽回を支え、プーチン氏を交渉の場に引きずり出すべきである。
高官級会合の後、発表された共同声明は「恒久的な平和に向けたプロセスを開始すべきときだ」とした。恒久的な平和の実現には、国際法を犯し隣国の主権と領土の蹂躙(じゅうりん)を続ける侵略者ロシアの撤兵が欠かせない。
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2025年3月14日付産経新聞【主張】を転載していますimbun
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