
公示地価が19年連続で最高となった「山野楽器銀座本店」(中央)=東京都中央区
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地価の上昇基調が続いている。
国土交通省がまとめた1月1日時点の公示地価は全用途の全国平均で前年から2・7%上昇し、4年連続のプラスとなった。
伸び率はバブル経済崩壊後最大で、33年ぶりに2%を超えた前年を0・4ポイント上回った。投機的な動きには警戒する必要があるが、現在の地価は実需に基づいているとされる。国交省は「景気が緩やかに回復しており、全体として上昇基調が続いている」と分析した。
安定的な地価上昇は資産効果を通じて個人消費を促すほか、土地の有効活用を図ろうとする企業活動を後押しする。地価上昇を賃金と物価上昇による経済の好循環につなげたい。
地価が上昇している要因として挙げられているのが、インバウンド(訪日外国人客)の増加である。
商業地は前年から長野、宮崎など5県が上昇に転じ、34都道府県でプラスになった。インバウンド効果もあって、人気観光地や繁華街を中心に地価上昇が地方にも波及していることがうかがえる。

堅調な住宅需要も地価を押し上げている。東京圏や大阪圏の中心部で高い上昇率となっているほか、地方圏も交通利便性の高いエリアで上昇基調が継続している。駅周辺などでは商業地でもマンション用地としての活用が進んでおり、高い上昇率を示している。
半導体工場の新設に伴う地価上昇も続いている。雇用の増加が見込まれ、関連企業の工場や事務所、住宅などの用地需要が引き続き旺盛という。中でも次世代半導体の量産を目指すラピダスが工場建設を進める北海道千歳市の上昇は顕著で、商業地では全国の上昇率上位3位までを同市の調査地点が占めた。

先行きには懸念もある。資材価格の上昇で住宅価格が高騰し、消費者の購入意欲に影響を与えている地域が出ているからだ。地方の中核都市では全国平均を上回る値上がりが続いていた札幌、仙台、福岡の3市で住宅地の上昇率が鈍化した。
一方、東京23区では新築マンションの平均価格が1億円超と高止まりが続く。希望エリアで住宅取得が難しくなれば、消費者の不満が高まりかねない。今後の価格動向には注意を払う必要がある。
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2025年3月21日付産経新聞【主張】を転載しています
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