米国がイランの複数の核施設を軍事攻撃した。核武装を阻止するとしてイランを攻撃中のイスラエルに加勢した。イランは反発している。世界情勢は重大な局面を迎えた。
Donald Trump Marco Rubio Iran

イラン核施設への攻撃について、国民に向けて演説するトランプ米大統領(手前)=ワシントンのホワイトハウス=6月21日(AP=共同)

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米国がイランの複数の核施設を軍事攻撃した。核武装を阻止するとしてイランを攻撃中のイスラエルに加勢した。イランは反発している。世界情勢は重大な局面を迎えた。

トランプ米大統領は攻撃の目的に、「核濃縮能力の破壊」と「核の脅威の阻止」をあげた。イランに和平に応じるよう求め、さもなくば追加の攻撃があると示唆した。この和平とは、核兵器保有の意思と開発手段をイランが放棄するのが前提だろう。

イランは核拡散防止条約(NPT)の加盟国で、核兵器の開発、保有は認められていない。戦争の拡大を防ぐには、イランは核武装しないと宣言し、その裏付けとなる国際原子力機関(IAEA)査察やウラン濃縮施設の破壊を受け入れなければならない。

イラン最高指導者ハメネイ師(イラン最高指導者事務所提供・ロイター=共同)

原子力発電用のウラン燃料は濃縮度数%で済むが、イランは濃縮度を60%に高めたウランを生産していた。核兵器級の90%へ近づく行動で、イスラエルなどがイランは短期間で核兵器を生産できると危機感を強めたのは当然だろう。

イランはイスラエルの生存権を認めないと公言する唯一の国である。イランが核兵器を持てば、直接または親イラン武装勢力によって、イスラエル攻撃に用いられる恐れがあった。それは核戦争の勃発につながる。

今起きている通常戦力による戦いは、1994年の朝鮮半島核危機の際、核武装を企てていた北朝鮮に対し起きたかもしれない事態だ。当時の米国や日韓は北朝鮮の核武装を見過ごしたが、現代のイスラエルや米国は核武装に進むイランの行動を傍観しなかったことになる。

世界の情勢は大きく変わっていく。石破茂政権は、トランプ政権と意思疎通を強めなければならない。同時に、一連の事態がさらなる危機を招くことにも備えるべきだ。

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核兵器の説明を受ける北朝鮮の金正恩総書記(朝鮮中央通信=ロイター)

邦人救出にとどまらない。イランがホルムズ海峡に機雷を撒(ま)くなどして封鎖の挙に出れば、エネルギー輸入に深刻な支障を来す。機雷除去へ海上自衛隊の派遣は必要ないのか。世界の米軍基地や米国民へのテロ攻撃もあり得よう。在日米軍基地や空港の警備強化も急ぎたい。

中東方面への米軍出動の間隙(かんげき)を突いて、北東アジアで中国が軍事的圧迫を強めてくる事態への警戒も怠れない。

中国の習近平国家主席(ロイター)

2025年6月23日付産経新聞【主張】を転載しています

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