厚生労働省が発表した人口動態統計によると、令和6年に生まれた外国人を含む子供の数が9年連続で過去最少を更新した。
Infants in hospital beds

病院のベッドで過ごす新生児

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令和6年に生まれた外国人を含む子供の数は速報値で72万988人と9年連続で過去最少を更新した。厚生労働省が発表した人口動態統計で分かった。

厚労省が6月頃に発表する日本人に限った概数では70万人を割る可能性が高い。

出生数の減少は政府想定より15年速いペースで進んでいる。婚姻数は49万9999組と前年より増えたが、戦後2番目に少なく低迷している。日本は婚外子が少ないため、婚姻数の減少は出生数に大きく影響する。

黄金い落ち葉の絨毯を歩く家族連れ(岩崎叶汰撮影)

政府は事態を深刻に受け止める必要がある。経済的な不安を抱え、子供を産みたくてもためらう人は少なくない。若者の雇用の安定と所得の向上を着実に進めることが重要だ。

政府は「こども未来戦略」に基づく「こども・子育て支援加速化プラン」を取りまとめた。児童手当の拡充など一部の対策はすでに始まっている。

今年4月からは、両親がともに育児休業を14日以上取った場合、手取りで休業前の実質10割に相当する給付金を受け取れる制度が始まる。

厚労省の5年度調査によると、男性の育休取得率は前年度の17・1%から30・1%となり、初めて3割を超えた。だが、女性の取得率は84・1%に上り、なお開きがある。

少子化の原因には未婚化、晩婚化が指摘される。子育ての負担が女性に集中する「ワンオペ育児」の傾向は依然あり、女性の社会進出と収入増を妨げ、出産意欲を低下させる要因ともいわれている。4月から始まる新制度を積極的に活用し、男性の育児参加を進めたい。

須磨海水浴場で水遊びを楽しむ地元の幼稚園児=神戸市須磨区(安元雄太撮影)

少子化と同時に忘れてならないのは、75歳以上の後期高齢者は増えていくという点だ。6年の死亡数は4年連続で増加し161万8684人となり、死亡数から出生数を差し引いた「自然減」は89万7696人といずれも過去最多だった。

昨年末までにすべての団塊の世代が75歳以上になった。今後も死亡者数が増え、人口減少が加速することが予想される。人手不足に拍車がかかり、地方の過疎化も進む。

少子化の速度を緩やかにして時間を稼ぎ、人口減でも豊かさが実感できる社会を構築しなければならない。石破茂政権にはそのための具体策を急ぎ示してもらいたい。

2025年3月3日付産経新聞【主張】を転載しています

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