
ジャングリア沖縄についておこなわれた記者会見=1月28日、東京都千代田区(酒井真大撮影)
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2025年大阪・関西万博が開催中にもかかわらず、近畿は景況感の盛り上がりがいま一つ-。こんな実態が内閣府の5月の景気ウォッチャー調査で浮き彫りになった。対照的なのは、7月25日にテーマパーク「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」が本格オープンする沖縄で、景況感は全国トップ。万博期間はあと約4カ月、近畿は〝地域格差〟をはね返せるのか。
景気ウォッチャー調査は、景気を「良い」と感じている人と「悪い」と感じている人のどちらが多いかを毎月調べるアンケート。大阪出身で、1970年万博開催の立役者でもあった作家、堺屋太一氏が旧経済企画庁(現内閣府)長官だった2000年、導入を主導した。
日本全体と国内12地域ごとに出す結果は「街角景気」と呼ばれ、景気に関する動きを観察できる立場の人たち(景気ウオッチャー)の「肌感覚」を調べる。

対象はタクシー運転手や小売店の店主、中小企業の経営者、百貨店やスーパーの従業員、レストランのスタッフら約2千人。彼らが3カ月前と比べた景気の現状についてのとらえ方を数値化したのが「現状判断指数」で、50を上回れば景気が良いとされる。
5月は、全国の現状判断指数は前月比1・8ポイント上昇の44・4と、5カ月ぶりに改善。全12地域中、甲信越(2・3ポイント低下)を除く11地域が上昇した。
近畿は45・1で前月比0・8ポイントの小幅増。上昇した11地域の中ではプラス幅は最下位だった。今年2月以降は好不況の分かれ目である50を下回ったまま。4月13日に大阪・関西万博が開幕し、大きな経済効果が期待されたにもかかわらず、景況感にはほとんど反映されていない形だ。ニッセイ基礎研究所の佐藤雅之研究員は「万博は現状では力不足」と語る。

5月の調査でも、万博のプラス効果を示すウオッチャーたちの声はある。それでも近畿全体に盛り上がりが広がらないのは、効果が限定され、多くの人が実感できていない可能性があるからだ。
あるウオッチャーからは、マスコットの人気が好調で、新幹線の停車駅やターミナル駅構内の店は好調を維持しているものの、「それ以外の駅では恩恵が乏しい」とのコメントが上がった。特定の交通拠点に効果が集中していることを示唆している。
別のウオッチャーからは「万博で貸切バスが多く使われていることで、バスの予約が難しく、(ほかのレジャー施設への)団体客の立ち寄りが減少している」との声が出た。万博が近畿のほかの観光拠点の客を食い、近畿全体での盛り上がりを押し下げている懸念もある。
一方、沖縄はここ半年をみると一貫して近畿を上回って推移。4、5月は、2カ月連続で前月比でプラスとなった。
ニッセイ基礎研の佐藤氏は、トランプ関税への懸念の和らぎや訪日客の回復などに加え、沖縄本島北部で計画されているジャングリア沖縄への期待があると考える。
「Power Vacance!!(パワーバカンス)」がコンセプトのジャングリアは、世界自然遺産「やんばる」に近く、広大な森林と最新技術を融合させた自然体験型テーマパーク。
森の中でリアルな恐竜ロボットに遭遇したり、大型気球に乗って絶景を楽しんだりできる20以上のアトラクションや飲食・物販店もそろえる。総面積は、東京ドーム約13個分に相当する約60ヘクタールに達する。
5月の調査では、現状判断指数にジャングリア沖縄に関するコメントは出てこないが、2、3カ月先の見通しを示す「先行き判断指数」には多くのコメントが出てくる。

たとえば「夏休み期間の観光需要が見込まれることに加えて、大型レジャー施設の開業を迎えているため、2~3カ月後の景気はやや良くなるとみている」「大型レジャー施設の開業で沖縄が更に注目され、観光客が増えるとみている」など。佐藤氏は「先行き判断指数での期待が、現状判断指数にも影響している」とみる。
コンテンツの魅力に加え、近畿よりコンパクトな沖縄では、一つの巨大テーマパークの存在感が大きいともみられる。
万博の効果がなかなか行き渡らない近畿。これから書き入れ時の夏休みシーズンを迎えるが、会場への集客だけでなく、魅力的なコンテンツで近畿各地に観光客を呼び込む取り組みを急ぐ必要がある。
筆者:山口暢彦(産経新聞)
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