[SPONSORED]「獺祭こそが私たちの本質である」―。そう語るのは、旭酒造改め獺祭の代表取締役社長、桜井一宏氏である。山口県の山間にある小さな蔵から、世界を見据える挑戦が始まっている。
Dassai CEO @ Tokyo Bar Show3

酒類・バー業界の祭典「東京インターナショナルバーショー2025」の獺祭ブース(©JAPAN Forward)

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2025年6月1日、旭酒造はその社名を「獺祭(DASSAI)」へと変更する。山口県の山あいに拠点を置くこの酒蔵は、今や日本を代表するプレミアム日本酒ブランドとして世界中で知られる存在となった。今回の社名変更は、ブランディングの変更などではなく、「獺祭」という名のもとに企業の覚悟と信念を示す決断である。

JAPAN Forwardの単独インタビューに応じた代表取締役社長の桜井一宏氏は、獺祭の進化の歩みとともに、日本酒の可能性を世界に広げようとする挑戦について語った。

獺祭代表取締役社長の桜井一宏氏(©JAPAN Forward)

伝統を問い直す

「『旭酒造の獺祭』と呼ばれると、まるで他にもいろいろなブランドを持っているように聞こえる。でも、私たちは獺祭そのものなんです。」桜井氏はこう語る。「仮に失敗したとしても、他のブランドに変えてそこから逃げたり道を変えたりするのではなく、『獺祭』の名で挑戦し続ける。それが私たちの覚悟です」。

この明確な姿勢こそが、獺祭というブランドの核を成している。守るべきは伝統ではなく、その先にある進化であるという理念が、桜井氏の言葉から伝わってくる。

「日本文化は保守的な面があります。『伝統はそのまま守るもの』という考えが根強い。でも私は、伝統こそ変化しなければ生き残れないと思っています。リスクを取り、失敗し、修正し、再挑戦する―─それが、私たちが日本酒でやってきたこと。そして、他の伝統産業ももともとその繰り返しで文化が出来上がってきたと思っています」

世界市場への挑戦

こうした進化への意志こそが、獺祭が世界で認知されるブランドへと成長した理由である。とはいえ、その道のりはこれまでの歩みと同様、これからも平たんではない。

「最大の課題はふたつあります」と桜井氏は語る。「ひとつは物流。日本酒はワインと同じ醸造酒ですが、はるかにデリケートです。プレミアムな日本酒は5度以下で保管する必要があり、鮮度が命です。ワインのように熟成による味の変化を楽しむというより、新鮮なまま楽しむのが理想。そのため、輸送や保管、販売方法まで全てが異なります」。

東京バーショーに出席した桜井一宏氏(©JAPAN Forward)

ふたつ目の課題は、そもそもの「日本酒」に対する固定観念である。

「海外ではまだ『日本酒=熱燗で寿司と一緒に飲むもの』というイメージが根強く、非常に限定的です」。実際、アメリカにおける日本酒の市場シェアは全体の0.2%程度。欧州ではさらに少ないという。

この認識を変えるには時間も手間もかかる。しかし、それでも諦めない。
「完璧な戦略なんてありません。まずは一口飲んでもらって、笑顔になってもらう。それがすべての始まりです。大切なのは、ただの“顧客”ではなく“ファン”をつくること。そして、海外のパートナーと常に対話を続けながら、試行錯誤を繰り返すことです」

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獺祭磨き二割三分に込めた哲学

獺祭のラインナップの中でも、象徴的な存在として知られるのが「獺祭磨き二割三分」である。

「もともとはマーケティング的な挑戦から始まりました。父が“世界一磨いた酒”を作りたいと言って、当時では非常識だった“精米歩合23%”を目指しました」。桜井氏は振り返る。最初は単なる話題作りと見られることもあったが、磨きと技術を極めた先に、雑味のない澄んだ味わいと、繊細で奥行きのある日本酒が生まれた。

東京バーショーでの獺祭の試飲会(©JAPAN Forward)

「50%を超えて削っても意味がないと言われました。でも、信じて突き進んだ結果、いまでは『23』が私たちにとっての象徴です。アメリカの酒蔵オープン日、車のナンバー、結婚式の日まで、すべて“23”。私たちとして大事な数字になっています」

獺祭の味わいにも、この哲学は反映されている。

「飲みやすい=初心者向け、複雑=通好み、といういわゆる“日本酒通“の意見がありますが、私たちはそういったものを重視していません。美味しいものは美味しい。誰にでも素直に美味しさが理解でき、でも何度飲んでも飽きずに発見がある。そんなお酒を目指しています」

「喜び」を届ける酒造り

桜井氏がもっとも重視するのは、「飲む人に幸せを届けること」だ。

「たしかにお酒ですから、酔うものです。でもそれだけじゃない。人と人をつなぎ、美味しさを料理と共に産み出し、人の心に喜びをもたらす。それが私たちの使命です。文化も、喜びがなければ意味がない」

東京バーショーでの桜井一宏氏と獺祭チームメンバーら(©JAPAN Forward)

その思いは、日本酒という枠を超え、日本文化全体の発信へとつながっている。

「私たちは、単に商品を輸出しているわけではありません。背景にある日本の職人技、日本の価値観を、世界に届けようとしているのです。私たちの挑戦、そして挑戦するが故の数々の失敗を見て、他の日本の作り手たち──工芸、食、アートの分野でも──が『自分たちも挑戦してみよう』と思ってくれたら、それほどうれしいことはありません」

同時に、海外市場だけでなく、日本国内の意識改革も重要だと桜井氏は強調する。

「“日本のものは日本の中で完結していればいい”“変わったら本質が損なわれる”という思い込みがあります。でも、日本の職人技は、世界で通用する可能性がある。それをもっと信じてほしい。そして同時に、その可能性を花開かせるためにまだまだ変わり続けなければならない。そこも考えてほしい」

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ステレオタイプを超えて

「日本酒は熱燗で和食に合わせるだけじゃない。牡蠣、セビーチェ、カルパッチョ、ブルーチーズ、ドライマンゴー──どんな食材ともマッチする可能性があります」

一方で、海外だけではなく日本の寿司店でもワインやウイスキーが飲まれることが一般的になっている。それなのに日本食以外の場では日本酒は選ばれていない。

「それならば、なぜ日本酒が選ばれないのか。その問いに、私たちは正面から挑みたいのです」

桜井氏は最後にこう語り、インタビューを終えた。

インタビューに答える桜井一宏氏(©JAPAN Forward)

「芸術も、音楽も、文学も、変わり続けるものが残ります。日本酒も同じ。私たち獺祭がそこに向かい続けることは私たち自身だけでなく、日本の励みとなるでしょう。失敗することもある。でも、逃げません。それが“DASSAI”であるということ。そして、この名を掲げて、世界へと羽ばたいていきます」

協力:獺祭(旭酒造)

著者:ダニエル・マニング

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