ウィーンで開かれた国連犯罪防止刑事司法委員会で保護司制度が盛り込まれた日本主導の再犯防止に関する準則案が採択された。日本独自の制度である保護司制度が「HOGOSHI」として世界に広まる重要な契機となろう。
Ministry of Justice

法務省の庁舎=東京・霞が関(桐原正道撮影)

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日本独自の制度である保護司制度が「HOGOSHI」として世界に広まる重要な契機となろう。

ウィーンで開かれた国連犯罪防止刑事司法委員会で保護司制度が盛り込まれた日本主導の再犯防止に関する準則案が採択された。

準則とは、国連加盟国が立法や行政の施策を立案する際の基本的指針となるものだ。年末に開かれる国連総会で正式に成立する。保護司の制度や理念が世界で共有されることになる。

日本の制度が国際的に評価された証しだ。政府はこれを機に保護司制度の意義や知見を改めて国内外に発信してほしい。

準則案制定のきっかけは4年前に京都府で行われた刑事司法に関する国連の会議だった。

再犯率の高さが各国共通の課題として議題になる中、刑務所や少年院を出所した人の社会復帰を官民が連携して支援する日本の制度が注目された。

特に地域のボランティアとして、出所者らの就職先を確保したり、生活の相談に乗ったりするなど、立ち直りを支える保護司は参加国から高く評価された。これを受け、政府は再犯防止に関する準則の創設を提案し、各国の意見の取りまとめ役を務めていた。

保護司をモデルにした制度はすでにフィリピンやケニアなどが導入しているが、準則をきっかけに法務省は各国に保護司制度を「輸出」する方針だ。

持続可能な保護司制度の確立に向けた有識者検討会の倉吉敬座長(奥左)から最終報告書を受け取る牧原法相=2024年10月3日、法務省(共同)

それは良いとしても、解消すべき課題がある。足元の国内では保護司の高齢化や担い手不足が問題となっている。

今年1月現在、保護司は4万6千人で定員の5万2500人を大きく割り込んでいる。平均年齢は65歳超で70歳以上が4割を占める。

昨年には、法務省が設置した有識者検討会が、保護司を持続可能な制度とするための報告書を出した。報告書では、保護司の人脈に頼ることが多かった人材登用について、公募制を試行することや原則66歳以下としていた新任の年齢上限の撤廃などを提言した。焦点だった報酬制の導入は見送られた。

法務省は5年ごとに制度の在り方を検討するとしたが、人材確保に向けた方策の見直しは急務だ。準則を保護司らのモチベーションを上げる好機とし、名実ともに世界のモデルとなる制度を維持してもらいたい。

2025年5月25日付産経新聞【主張】を転載しています

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