月刊「文芸春秋」2月号では、「日韓厳冬」と題して識者による討論を掲載している。そのなかで、かつて外務省アジア局で韓国担当だった自民党の城内実(きうち・みのる)衆院議員が、現在の日韓関係をサッカーの試合に例えていた。文在寅(ムン・ジェイン)政権は、「審判を買収して反則を繰り返している状態」だというのだ。
その審判が再びとんでもない反則を犯した。ソウル中央地裁は1月8日、元慰安婦らが日本政府を相手に起こした損害賠償を求める訴訟で、原告1人当たり1億ウォン(約950万円)の支払いを命じる判決を言い渡した。
国際法には、他国の裁判権に国家は服さないとする「主権免除」の原則がある。それを踏みにじる判決とあって、韓国内の専門家からも驚きの声が上がったらしい。そもそも判決は事実に基づいていない。「反人道的行為」の証拠はどこにもなく、「謝罪や賠償を受けていない」というのも明確な誤りである。
同じ雑誌に掲載された産経新聞の久保田るり子編集委員の原稿を読むと、さらに憂鬱な気分になる。ベルリン中心部に慰安婦像を設置した韓国系市民団体には、ドイツに暮らす日本人女性のネットワークの応援があったというのだ。
「日本軍はアジア太平洋地域の無数の少女や女性を強制連行し、性奴隷にした」。ソウル中央地裁の判決は、慰安婦像の台座に刻まれた説明文をコピーしたかのような内容である。「慰安婦=性奴隷」説を広めてきた、海外の反日団体が勢いづくのは間違いない。
城内氏は、先の発言に続けて、もはや韓国とゲームは続けられないとして、こう言う。「向こうが態度を改めるまで、日本はフィールドを出るべきだと思います」。フィールドを出たとしても、日本を貶(おとし)める歴史の捏造(ねつぞう)との戦いは続く。
◇
2021年1月12日付産経新聞【産経抄】を転載しています