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NTT東日本は1月18日、国産ドローンを開発する合弁会社を設立すると発表した。ドローンは中国製が世界シェアの7割を占めるとされるが、データ流出への懸念など安全保障上の理由から米国や欧米諸国などで排除する動きが強まっている。中国製に替わり、安価で安全性の高いドローンのニーズが高まっており、国産開発に向けた官民の動きが活発化してきた。
新会社はIT企業のオプティム、ドローン販売のワールドリンクアンドカンパニー(京都市北区)との3社合弁で設立。農薬散布や生育計測などの農業向けを皮切りにインフラ点検など幅広い分野向けの国産ドローンを開発し、人手不足など地域社会の課題解決に役立てる。社長に就任するNTT東日本の田辺博副社長は18日の会見で「ドローンは使われ方を含め、今後5年10年で大きく成長していく」と語った。
国内でドローン開発を手がける企業は現在、中小規模が多く、世界市場での存在感は薄い。だが、ソフトバンクが昨年12月に双葉電子工業と遠隔地から高精度で操縦できる国産ドローンの共同開発を発表するなど大手も含め開発を積極化し始めた。政府も安全性が高い次世代ドローンを開発する国内企業を育成しようと資金調達の優遇や補助金提供などの支援に乗り出す。
背景には中国のドローン最大手「DJI」が世界シェア7~8割を握り、市場を席巻していることへの危機感がある。ドローンは安全対策が弱いと飛行情報や撮影した画像などのデータを抜き取られる恐れがある。重要インフラの点検などに使われため、悪用されれば被害は甚大だ。米政府は昨年末にDJIを安全保障上の問題がある企業を並べた「エンティティーリスト」に加え、禁輸措置の対象にするなど排除が進む。
中国製は「機体だけだと国産と倍の差がある」(関係者)といい、コスト競争力は高い。各省庁が保有するドローンも現状は中国製が多いとされる。とはいえ、安全保障の観点に立てば「信頼できるな機体を推奨したい」(政府関係者)。政府は来年度から安全性能を備えたドローンに順次切り替える方針で、国産の導入を視野に入れる。
もっとも、コスト面で中国製との差は歴然としている。国産メーカーにとっては機体だけでなく、撮影した画像の解析技術やデータを分析する技術なども含めて一括で提供し、サービスとして差別化していくことが今後の競争を勝ち抜くためのカギを握りそうだ。
筆者:万福博之(産経新聞)