~~
「私の内閣では、人権をはじめとした普遍的価値を守り抜く」。岸田文雄首相は12月9日、衆院本会議での代表質問で強調した。その後の米政権が主催する初の「民主主義サミット」でも、こう訴えた。「深刻な人権状況にしっかり声を上げていく」。その意気やよし、ではある。
折しも10日から北朝鮮人権侵害問題啓発週間が始まった。これに合わせ、岸田内閣の全閣僚は北朝鮮による拉致被害者の救出を願うシンボルである「ブルーリボン」を着用した。抄子も遅ればせながらブルーリボンバッジを買い求め、今月からスーツの胸に着けている。
北朝鮮をめぐっては拉致被害者を救う会の西岡力会長が、7日の小紙「正論」欄で注目すべき内部情報を記していた。中枢部が日本から経済支援を得るため、2002年に一度「死亡」と通報してしまった拉致被害者を、どういう言い訳をつけて帰すかの検討を進めているというのである。
事実だとすると朗報だといえる。人権侵害問題啓発週間では、多くの国民がブルーリボンをつけて「拉致被害者を取り戻す強い意思を示す」(松野博一官房長官)ことで、北朝鮮の決断を促すべきだろう。大阪地裁堺支部のように、法廷内でのブルーリボンバッジ着用を禁じるなどもってのほかである。
ただ、日本が拉致問題解決への協力を国際社会に呼び掛けている以上、他国における人権抑圧も座視してはならない。少数民族弾圧などあまたの人権問題を抱える中国で来年2月に開催される北京冬季五輪について、首相がなかなか態度を明確にしないことは望ましくない。
日本が人権を何より重んじるという姿勢を発信してこそ、北朝鮮も拉致被害者を帰国させなければ何も得られないと痛感することだろう。
◇
2021年12月11日付産経新聞【産経抄】を転載しています