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Family members of young Japanese abducted by North Korean agents, led by Shigeru and Sakie Yokota, rally in Tokyo, calling for all of the abductees to be returned home at once. (Sankei)

 

今月の横田滋氏の死去は、北朝鮮が1970~80年代の拉致計画の下、実行した残虐行為を思い出させた。拉致の犠牲者の一人、横田氏の娘、めぐみさんは13歳のときに、新潟県で学校からの帰宅途中、北朝鮮の工作員に拉致された。

 

めぐみさんは誘拐犯によって北朝鮮に連行され、スパイ養成所で日本語を教えさせられた。横田氏と夫人の早紀江さんは、拉致事件について何十年にもわたって啓発活動を行うとともに、めぐみさんや他の拉致被害者の帰国に向けた取り組みを進めるよう日本政府に訴え続けてきた。

 

日本は北朝鮮によって国民が拉致された国々の中の一つに過ぎない。米ワシントンの北朝鮮の人権委員会は、北朝鮮が少なくとも14カ国の国民を拉致した証拠を集めた。すなわち、韓国、中国、フランス、ギニア、イタリア、日本、ヨルダン、レバノン、マカオ、オランダ、マレーシア、ルーマニア、シンガポール、タイだ。

 

このリストに米国を付け加えたい。デービッド・スネドンさん、2004年に中国で消息を絶った米国人学生だ。彼は、北京での数カ月の留学を終え、帰国を前に、雲南省で休暇を過ごしていた。2013年、東京でインタビューした古屋圭司拉致問題担当相(当時)はこう語った。「米国人が北朝鮮に拉致されている可能性が非常に高い」。

 

日本政府が拉致被害者として認定しているのは17人に過ぎないが、おそらく数百人の日本人が同じ被害に遭っているとみられる。また、韓国人拉致被害者は、漁民、兵士、学生、一般人らで数千人にも上る。

 

何とか帰国できたレバノンの拉致被害者は、北朝鮮のスパイ機関で、フランス、オランダ、イタリア人の女性を見たと報告している。北朝鮮はそれらに関する一切の情報の提供を拒んでいる。

 

 

最近の拉致事件

 

北朝鮮の誘拐犯は近年、中国に焦点を当てており、そこで、北朝鮮難民を支援する韓国人たちを拉致してきた。中国は、北朝鮮の誘拐犯が中国で活動する際は、見て見ぬふりをしているのだ。

 

最もよく知られている中国での失踪事案は、シカゴのキム・ドンシク牧師のケースだ。韓国人で米国永住権を持つキム牧師は、中国で、北朝鮮から逃れてきた人々のための秘密のシェルターをつくったが、2000年、中朝国境の町、延吉で姿を消した。拉致と彼の死去についての詳細は、数年後、拉致実行犯うちの一人が、韓国に逃れ、逮捕、起訴されたことで明らかになった。

 

実行犯は、キム牧師の拉致が北朝鮮の治安当局高官の命令によるものだったと韓国当局に証言した。

 

2011年末に金正恩が権力の座について以降、北朝鮮の誘拐者は欧州に向きを変え、現地で留学したり、働いたりしている何人かの自国民を拉致したり、拉致しようとしたりした。

 

2013年、フランスの大学で一人の北朝鮮人学生が姿を消した。一週間後、彼は警察の警護を受け、再びキャンパスに姿を現した。全貌は明らかになっていないが、フランス当局が、彼が北朝鮮に拉致される危険があるとみて、警護する判断を下したことが分かる。

 

この学生、キム・ハンソルさんは、金正恩の甥であり、2017年にクアラルンプールの空港で金正恩の命令によって殺害された金正恩の異母兄の息子だ。父親の死後、キム・ハンソルさんは再び姿を消し、西側のある国に隠れているとされる。キム・ハンソルさんは西側で教育を受け、流ちょうな英語を話す。彼は叔父を独裁者と呼び、北朝鮮の国民に同情を示している。

 

よく似たエピソードが2014年にあった。北朝鮮工作員がパリの大学で一人の北朝鮮人学生を拉致した。その若い男性は、粛清・処刑されたばかりの北朝鮮高官の息子だった。学生はシャルルドゴール空港で工作員から逃れ、現在も隠れている。

 

2018年末、北朝鮮の駐イタリア代理大使と夫人が亡命した。彼らはローマに、障害を持つとされる10代の娘を残していたが、4日後、娘は消息を絶った。彼女は最終的に平壌に姿を現した。彼女は北朝鮮の工作員によってイタリアから拉致されたとみられている。彼女の拘束は、両親が亡命を公表しないようするための警告だと解釈されている。

 

 

オットー・ワームビアさんの事案

 

今月は、横田滋氏の死去に加え、北朝鮮による残虐行為の別の悲しい記憶を思い出させた。6月19日は、でっち上げられた罪により平壌で拘束され、そのときの負傷がもとで亡くなった米国人大学生、オットー・ワームビアさんの命日だった。2017年6月、北朝鮮はオットーさんを植物状態で解放したが、帰国後に帰らぬ人となった。

 

オットーの母親、シンディー・ワームビアさんは、息子の死の記念日について話し、「北朝鮮のような悪が存在するとは全く知らなかった」と語った。

 

ワームビア夫人は息子をイノセント(罪がない)と呼んだが。横田めぐみさんもイノセントだった。それは残忍な金一族体制の支配に苦しむ、2500万人もの抑圧された北朝鮮の国民も同じだ。

 

著者:メラニー・カークパトリック(Melanie Kirkpatrick)
メラニー・カークパトリック氏は、米ハドソン研究所上級研究員。著書に、「北朝鮮からの脱出:アジアの地下鉄の語られない物語」など。

 

 

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