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7月3日、静岡県熱海市伊豆山地区で発生した土石流の起点近くに、大規模な太陽光発電所(メガソーラー)が設置されている。土石流との因果関係は今のところ不明だが、政府は調査に乗り出した。災害を引き起こす可能性のある山間部での設置が今後規制されれば、太陽光発電推進政策に影響を及ぼす可能性がある。

 

 

土石流の主因はずさんな盛り土

 

約2キロメートルにわたり住宅122棟を巻き込み、30人近い死者・行方不明者を出した今回の土石流の起点となった地点には、5万立方メートルの盛り土があり、これが集中豪雨により水を含んで大きく崩落し、土石流を引き起こした。

 

「昔から水の通り道だから、こんなところを埋めたら大変なことになる」と地元の人は盛り土が行われる前から言っていたという。熱海市によると、2007年に土地所有者の不動産業者から造成工事の申請があり、許可したが、住民から苦情が出て調査をしたところ、木くずやふろのタイルなどの産業廃棄物が盛り土に含まれていた。2011年に新しい土地所有者が熱海市などの指導で産業廃棄物を取り除いたという。

 

9日、地質学者の塩坂邦雄氏が記者会見し、造成工事では盛り土に加えて尾根が削られ、雨水の流れ込む範囲(集水域)が変化したことで、盛り土側により多くの雨水が流れ込むようになり、土石流を誘発した、と説明した。

 

 

高まる住民の不安

 

衛星写真やマスコミの報道映像で、削られた尾根に多数の太陽光パネルが設置されていることが分かる。梶山弘志経済産業相は6日、原因究明の一環として、太陽光発電所の事業者への聞き取り調査や水脈調査を行うことを明らかにした。小泉進次郎環境相は、全国の太陽光発電所の立地規制を検討すると表明した。

 

わが国の太陽光パネルの設備容量は62ギガワット(GW、1GWは100万kW)で、国土面積当たりでは、中国の8倍、米国の23倍にも達し、断トツの世界1位である。政府は2030年までにさらに20GWの太陽光パネルの増設を計画しているが、山間部におけるメガソーラー設置のため土木工事や森林伐採を行うことは、景観を損なうだけでなく、防災の観点から慎重を期す必要がある。

 

今回の土石流と太陽光発電所との因果関係は確認されていないが、災害を引き起こしかねない山間部への発電設備設置に対する住民の不安を払拭しなければならない。太陽光パネルの設置場所の環境アセスメント、事業者の事業能力、事業開発後の国や自治体の立ち入り調査など、太陽光発電事業についても原子力発電所並みの厳しい規制が必要ではないか。

 

筆者:奈良林直(国基研理事・東京工業大学特任教授)

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第813回(2021年7月12日)を転載しています

 

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