Underwater Photographer of the Year (UPY) Competition 002
水中写真コンテスト「アンダーウオーター・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」で、日本人初の優勝を果たした伊藤亮平さん=埼玉県吉川市(内田優作撮影)

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世界的な水中写真コンテスト「アンダーウオーター・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー(UPY)」の2021年大会で、埼玉県吉川市の美容師、伊藤亮平さん(36)の作品がポートレート部門で優勝に輝いた。日本人の優勝は全部門を通じて初めてとなる。伊藤さんは「目標としてきた海外の写真家たちと名前を並べることができ、信じられない気持ちだ」と喜びを語った。

 

水中写真コンテスト「アンダーウオーター・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」のポートレート部門で優勝作品に選ばれたコブダイの写真(伊藤亮平さん提供)

 

撮影は一期一会

 

優勝した作品は、千葉県館山市沖の海で撮影したベラ科の魚「コブダイ」の写真だ。名前の由来である頭のこぶと大きなあごを迫力ある構図で表現した。海外の人にとって珍しい魚だと考えて題材に選び、十数回の撮影を重ねた末、「最も『質感』が伝わる」と感じた1枚を選んだ。今大会にはモルディブ沖の海で撮ったマンタの写真も出展し、新人部門で2位となった。

 

9年前に旅行で訪れたサイパンで初めてダイビングを経験し、海の美しさに魅せられた。海のない埼玉県の出身だけに「海に憧れがあった。サンゴ礁やカラフルな魚にきれいだなと感動した」。中学生時代から写真が趣味だった伊藤さんは、やがて水中写真にのめり込むようになった。

 

「海での撮影は一期一会。同じ海は二度と見ることができない。季節や潮の流れによって違う景色を目にすることができる」

 

吉川市で美容室を経営するかたわら、週1回は千葉県や静岡県の海で水中写真を撮影し、年2回ほど海外にも出向く。

 

 

「人間ってたいしたことないな」

 

多くの潜水経験の中でとりわけ強く印象に残っているのは、2年前の館山市沖の海でのザトウクジラとの邂逅(かいこう)だ。コブダイを撮ろうとしていたとき、大きな影を感じて目を向けると、体長10メートル以上の巨大なザトウクジラが視界に入ってきた。

 

「目玉だけで子供の頭くらいある。しかも、無機質な目ではなく意思疎通ができそうな目…。ザトウクジラの体は自分よりもはるかに大きく、『人間ってたいしたことないな』と思った」

 

今は、小笠原諸島沖に生息するサメの一種「シロワニ」を狙っている。まだまだ撮りたいものは多い。

 

「水中写真は、限られた人しか行くことができない海の美しさを誰にでも伝えられる。海外の人に『日本の海に潜ってみたい』と思ってもらえるような写真を撮りたい」

 

筆者:内田優作(産経新聞)

 

 

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