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【永遠の北斎】『神奈川沖浪裏(グレート・ウェーブ)』の尽きせぬ魅力

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巨大な浪が富士山の上にそびえたち、今まさに神奈川の沖合で3隻の漁船を飲み込もうとしている―。一見シンプルなコンセプトのようだが、北斎の「神奈川沖浪裏」が最初に登場してから200年近く経った今なお、そのイメージはこれまで以上に高く評価され、認知されている。

 

新しい日本のパスポートを飾るだけでなく、Tシャツやコーヒーカップ、レゴのブロックに至るまで、北斎の「大浪(グレート・ウェーブ)」として知られる「神奈川沖浪裏」は、今や世界的な現象である。

 

JAPAN Forwardは、この絵師の生誕260周年を記念して、魅惑的な傑作を描いた芸術家、葛飾北斎にこの連載企画を捧げる。

 

約2世紀前に生きた北斎のデザインは、その時代と同じくらい私たちを魅了し、今日でも影響を与え続けているのだ。

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新しい日本のパスポートに刻まれた北斎の「グレート・ウェーブ」

 

私の北斎との出会いは、故郷オランダの地元の美術館だった。北斎の『富嶽三十六景』と他の優れた作品に初めて出会って以来、北斎の芸術に魅了された。北斎や他の浮世絵師についてもっと学ぶために大学の日本学プログラムに入った。学位を取得して日本語を十分習得した後、日本に移住して日本美術の研究を続けている。

 

日本の浮世絵史を勉強していくうちに、北斎に魅了されたのが全く不思議ではないことに気づいた。北斎の時代には、多くの浮世絵師が北斎の形式やテーマを真似た。木版印刷の技術が発展し、北斎の作品はほとんどの都会の日本人にとって手頃な価格になった。北斎の「神奈川沖浪裏」は何千点も印刷、販売された。

 

Pエリック・クラーンによるレゴの「グレート・ウェーブ」

 

ヨーロッパ人も最初から北斎の作品に感銘を受けている。長崎出島での交易で、オランダ東インド会社に勤めていたドイツ人医師、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトは、19世紀初頭に北斎と出会い、いくつかの作品を購入した。私が地元ライデンで最初に見た北斎の作品は、まさにこのシーボルトのコレクションだった。

 

19世紀半ば、日本の港がさまざまな西欧諸国との貿易に開放されると、北斎の「グレート・ウェーブ」はヨーロッパを席巻し始めた。

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オランダのポスト印象派の画家、ヴィンセント・ファン・ゴッホは、ヨーロッパで「神奈川沖浪裏」の最も有名な崇拝者の一人だ。ゴッホは手紙で弟に「神奈川沖浪裏」の魅力を次のように説明している。「波は爪のようで、船はその中に閉じ込められている。そう感じるのだ。北斎は観る者に悲鳴を上げさせる。」

 

「神奈川沖浪裏」はゴッホの北斎コレクションにはなかったが、ゴッホはそれを高く評価し、おそらくゴッホの最も偉大な作品の一つ、『星月夜』に影響を与えたと考えられる。ポール・セザンヌ、ポール・ゴーギャン、エドガー・ドガ、ピカソなど、ヨーロッパのモダニズム出現を担った多くの画家たちも、北斎の作品に魅了されて影響を受けた。

 

ヴィンセント・ファン・ゴッホ『星月夜』(1889年、ニューヨーク近代美術館)

 

「神奈川沖浪裏」は美術作品だけでなく、音楽にも影響を与えた。フランスの作曲家、クロード・ドビュッシーは、壁に「神奈川沖浪裏」の写真を掛けていた。「神奈川沖浪裏」のダイナミックな動きの感覚と豊かな色彩は、ドビュッシーが高く評価される「ラ ・メール(海)」を作曲したとき、ドビュッシーにとって非常に重要だった。ドビュッシーは、レコードのカバーアートワークを自分で決定していた。「ラ・メール」の初版では、彼にインスピレーションを与えた「神奈川沖浪裏」を選んだが、富士山はラ・ メールの表紙には載っていない。

 

今日、「神奈川沖浪裏」はシカゴからミラノに至るまで、世界中の美術館にある。 約200点が残り、たまにオークションに出される。 2017年には、状態の良い作品が約100万ドルで落札された。近年も、状態の良くない「大浪」が約50万ドルで落札されていた。これは、200年近く経った今でも、北斎の波の価値が高まっていることを示している。

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ドビュッシーの「ラ・メール (海)」の初版(1905年)

 

Japan Forwardのこの連載記事では、北斎の見事なデザインに広がりを与えたさまざまな部分を紹介する。

 

北斎は創造的な天才だったが、彼の傑出したデザインは多数の要素で形づくられた。

 

この連載では、数週間に1度、この傑作「神奈川沖浪裏」に代表される北斎の尽きぬ魅力がいかに生まれたのかを、一つ一つ明らかにしたい。

 

著者:Frank Witkam フランク・ウィットカム(東京国立博物館学芸企画部 アソシエイトフェロー)

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この記事の英文記事を読む

 

【永遠の北斎】シリーズ
序:世界の人物100人に入った北斎の物語
1:『神奈川沖浪裏(グレート・ウェーブ)』の尽きせぬ魅力
2:北斎の優れたデザイン感覚
3:すみだ北斎美術館の「大江戸歳事記」展をご紹介

 

 

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