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【めぐみへの手紙】菅首相は必ず行動してくれると期待します

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横田めぐみさん

 

めぐみちゃん、こんにちは。元気ですか。夏の酷暑がようやく和らぎ、少しずつ秋の気配を感じるようになりました。43年もの忍耐の日々が続き、今年も気付けば9月です。本当に、いつになれば、すべての拉致被害者が帰国できるのかという怒り、情けなさ、もどかしさと向き合いながら、一生懸命、拉致事件の解決を呼びかけています。

 

今、日本では大きな政治の動きがあります。拉致問題の解決を最優先、最重要課題に掲げてきた安倍晋三首相が辞任され、拉致問題を担当する菅義偉(すが・よしひで)官房長官が首相に就任されました。

 

私たちはこれまで、十数代にわたるすべての政権を心の底から信頼し、被害者救出を託してきました。それは今後も変わりません。無慈悲な国家犯罪で連れ去られた子供たちに、祖国の土を踏ませる最後の決め手は、政治のゆるぎない決意と行動力に他なりません。

 

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9月はお父さんやお母さんの記憶に刻まれた月です。平成14年9月17日の日朝首脳会談で、北朝鮮はやっと拉致を認め謝罪しました。蓮池(はすいけ)さん夫妻、地村さん夫妻、曽我ひとみさんの5人の生存が明らかになりましたが、めぐみちゃんや多くの被害者が「死亡」と一方的に断じられました。

 

昭和52年、新潟でめぐみが姿を消してから20年を経て、平成9年に北朝鮮で生きていることが分かり、全国の被害者家族、支援者の皆さまと団結してようやく解決の頂に差し掛かったと思ったのもつかの間、地獄に突き落とされました。

 

その後、被害者死亡の証拠や説明は嘘だと分かりました。めぐみだとして送られてきた「遺骨」は、まったく別人の骨と鑑定されました。矛盾が暴かれるたび、生きたあなたの吐息を感じ、闘い続けることができました。

 

拉致の残酷さは、被害者の姿が見えず、声も聞こえず、無為な時が、じりじりと過ぎることです。まさに「生殺し」の日々です。でも、拉致被害者はもっと辛く厳しい時を北朝鮮で耐え忍び救いを待っています。

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これほど非道なことがあるでしょうか。拉致事件はまさに「命」の問題です。

 

国民の皆さま。どうか今一度、捕らわれた子供たちの姿を思い描き、救出へ声をあげてください。そして政治家、官僚の皆さま。与野党の違い、さまざまな立場の違いを越えて、議論を交わし、知恵を絞り、被害者を帰国させるため、全身全霊を尽くしてください。

 

日本が一丸となり、拉致事件という「国家の恥」を一刻も早くすすいで、日本のみならず、世界にとって幸せな未来がもたらされることを願ってやみません。

 

 

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今年も気が遠くなるような暑さが続き、84歳のおばあちゃんになってしまったお母さんは、いつ倒れてしまうか不安にかられつつ、あなたに会いたい一心で、日々を過ごしてきました。

 

年を重ねると、老いや病と直面します。食べることさえ、しんどく感じることがあります。これが「生」の実感なのでしょうか。

 

6月に天に召されたお父さんは、祭壇に飾った写真の中でニッコリとほほ笑んでいます。「お父さん、おはよう。がんばろうね」と毎朝呼びかけ、祈ります。立派に闘い抜いたお父さんを、明るく天に送りましたが、あなたと再会するため病室で必死に命の炎を燃やした心中を思うとき、体の真ん中をもぎ取られたような寂寥感(せきりょうかん)が漂ってきます。

 

新型コロナウイルスの災禍で、世界は大きな打撃をこうむっています。拉致問題をはじめ、さまざまな外交の動きがむなしく感じられ焦りが募ります。街頭での署名活動、人を集めた集会を開けず救出運動も厳しい現実に直面しています。

 

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ただ、危機を迎えた今だからこそ、局面を切り開く好機でもあるはずです。

 

拉致事件について菅義偉首相は「解決に全力を傾ける」と誓われました。拉致問題担当大臣に再び就かれた加藤勝信官房長官も「あらゆるチャンスを逃さず、1日も早い帰国につなげていく」と約束なさいました。必ず行動に移していただけると強く期待します。

 

首相の職を辞された安倍晋三さんも、必ずお体を回復され、再び私たち家族とともに力強く取り組んで頂けることを祈っています。

 

拉致事件から長すぎる時間が過ぎ、被害者も家族も年老いて、残された時は本当にわずかです。だからこそ、私たちには「結果」がすべてなのです。

 

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どうすれば、良き結果がもたらされるのか。国内外を訪ね、たくさんの人に訴えました。国会の議場で政治家の皆さまに尽力をお願いしたこともあります。

 

もがき苦しみ、命がけで行動し、たくさんの方の力添えがあってなお、事が進まない現実に、複雑な拉致問題の暗い闇を垣間見るような気がしています。まずは、日本国が一丸で立ち向かわないと、高い壁を突き破ることはできません。

 

だからこそ、すべての国民、拉致事件を知らない若い世代の方々にも事実を知り、解決を後押ししていただきたいのです。かつて日本に工作員が入り込み、大切な若者を次々と北朝鮮へ連れ去りました。国外でも日本人が同じように拉致されました。多くの人々が捕らわれたままなのです。

 

これほど重大で非道な事件がなぜ起きたのか。同じような惨劇が起こらないと言い切れるのでしょうか。問題の根源を見据え、すべてをすっきり解決しなければ日本の未来を安心して子供たちに引き継げません。

 

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めぐみちゃん。頼りないお母さんですが、毎日、あなたを思い、何とか暮らしています。お父さんもニコニコほほ笑み、私たちを見守っているはずです。どうか、どうか、力強く生き抜いて、救いを待っていて。子供の時と同じように、弾ける笑顔で「ただいま!」と声をあげ、元気に帰ってくることを信じています。

 

筆者:横田早紀江

 

 

2020年9月21日付産経新聞に掲載された記事を転載しています

 

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