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メタバース もう一つの世界…将来も予測

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現実とは異なった世界の住民となって、さまざまな人と交流する-。そんな誰もが一度は空想したことを実現するデジタル技術が「メタバース」だ。3次元(3D)の仮想空間であるメタバースの中で、自分の分身が歩き回って同じ空間にいる人々とリアルタイムで交流できる。文字や画像、動画のやりとりが主な会員制交流サイト(SNS)の次に流行するインターネットサービスとして、多くのIT企業が力を入れ始めている。米交流サイト大手フェイスブック(FB)もメタバースの開発に力を入れるため、社名変更すると報じられている。

 

 

「別世界」に没入

 

メタバースとは米国のSF作家ニール・スティーブンソンが1992年に発表した小説「スノウ・クラッシュ」に登場したインターネットの仮想空間の名前。「超える」という意味の「メタ」と「ユニバース(宇宙)」を組み合わせた造語だが、明確な定義は定まっていない。

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「別世界」に没入するという広い意味でとらえると、国民的ロールプレーイングゲーム(RPG)の「ドラゴンクエスト(ドラクエ)」なども、メタバースの一種といえるかもしれない。9月末に亡くなったすぎやまこういちさんが作曲したクラシック調の音楽を聴きながら、別世界での冒険に夢中になった人も多いだろう。

 

IT革命が進んだ90年代、実は日本はメタバース“先進国”だった。富士通は平成2(90年)に2Dの画像付きチャット「富士通ハビタット」のサービスを正式開始した。複数のプレーヤーが同時に遊ぶ大規模RPG(MMORPG)の先駆けだった。

 

平成9(97)年には通商産業省(現経済産業省)が主導し、NTTデータ通信(現NTTデータ)が電子商取引もできる3D空間「まちこ」の実証実験を開始した。翌10(98)年3月から商用サービスが始まり、延べ300店舗が出店、一時は7万5千人が利用していたという。光回線ではなく、電話回線を利用したインターネットの時代で、若者たちは通話料金が定額になる深夜早朝の時間帯に接続し、会話やネットショッピングを楽しんだ。

 

 

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ゲーム業界の変化

 

2003年に米リンデン・ラボが開発した「セカンド ライフ」では、仮想空間内の土地を売買する人が出て、トヨタ自動車や日産自動車が出店したことも話題となった。しかし、インターネットの回線速度やコンピューターグラフィックスの技術が不十分でブームの定着に至らなかった。

 

昨今、メタバースへの関心が高まっている背景にあるのは、通信技術の進歩もさることながら、ゲーム業界の変化の影響が大きい。

 

世界のゲームは、何をして遊ぶかはプレーヤーの自由に任せる「オープンワールド」が主流となっている。敵を倒して世界を救う一筋の物語を進んでもいいが、浮世を離れて好きなところに行き、珍しいアイテム集めに明け暮れたりしてもいい。昨年ヒットした任天堂の家庭ゲーム機向けソフト「あつまれ どうぶつの森」も昆虫採集や魚釣りをしたり、服や家具を作って売ったりとさまざまな楽しみ方ができるのが人気の秘訣(ひけつ)だ。

 

プレーヤーの自由度を高めるためには、時間とともに変化する風景や動植物などの生態、住民の行動など、ゲームの世界を細部にわたって作りこむことが要求される。こうしたノウハウを活用すれば、仮想空間に現実世界と同じような別世界を生み出すことも可能になる。

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ドラクエを手がけるスクウェア・エニックス・ホールディングス傘下で人工知能(AI)の研究開発を行うスクウェア・エニックス・AI&アーツ・アルケミー(AIAA・東京都新宿区)は今秋から東京大学に寄付講座を開設する。AIとシミュレーション技術を掛け合わせ、将来を予測できる「世界モデル」を作ることを目指す。

 

 

言葉の壁も乗り越え

 

現実を再現したメタバースを実験場に、自動運転などの新しい技術が社会をどう変えるかなどを事前に調べることも可能になる。AI研究の第一人者、東大大学院の松尾豊教授は「社会実装に向けたAI研究の第2ステージだ」と話す。

 

メタバースでは自動翻訳など、さまざまな技術も導入されるため、言葉の壁も乗り越えられる。「知りたい」と思った瞬間に、メタバースの分身が疑問を調べ、知識を送ってくれる未来がくるかもしれない。

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NTTも次世代高速通信の「IOWN」構想でメタバースの活用を柱に据えている。FBは欧州連合(EU)域内で今後5年間に1万人の高度な技術を持つ人材を雇用すると発表している。VR(仮想現実)ゴーグルなどによって、メタバースを楽しみやすくなっている。次世代IT技術の足掛かりとなるメタバースサービスに期待が高まる。

 

 

コロナ禍のイベント後押し

 

KDDI(au)は東京の渋谷周辺を3次元(3D)で再現した「バーチャル渋谷」で、「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス 2021」を開催している。バーチャル渋谷は同社が昨年5月にオープンさせたメタバース。31日まで音楽やお笑いのライブなどが楽しめる。昨年のイベントでは約40万人がアクセスしたという。

 

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大規模イベントの開催が自粛となったコロナ禍でメタバースを活用したオンラインイベントが増えている。9月に開催された世界最大級のゲームの展示会「東京ゲームショウ2021オンライン」では、メタバース会場が設けられた。VRゴーグルなどを装着してアバター(分身)となって、会場内を歩き、等身大で再現されたゲームのキャラクターを間近に見ることなどができた。

 

メタバースを使った企業の技術展示会なども開かれており、コロナ禍が普及を後押ししている。

 

筆者:高木克聡(産経新聞総務省担当)

 

 

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2021年10月26日付産経新聞【経済#word】を転載しています

 

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