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尖閣は「戦わずして勝つ」で守れ

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中国は孫子の兵法で来るか

 

「問題は尖閣諸島が中国の手に落ちるかどうかではない。いつ落ちるかだ」。ロンドン・キングス・カレッジのアレッシオ・パタラーノ教授はここ数年の中国の動向を見てこう断言する。

 

沖縄県の尖閣諸島に対する中国の攻略戦法は、武力衝突による決戦よりも、時間をかけて徐々に日本に圧力を加えて有利な地位を築き、孫子の兵法に倣って「戦わずして勝つ」選択肢を取ることが考えられる。台湾「解放」も恐らく同じ戦法であろう。

 

中国が尖閣諸島の領有を主張し始めたのは、周辺に豊富な海底油田があるとの調査結果を国連が明らかにした昭和44(1969)年以降である。

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それ以来中国の関心は次第に東シナ海での自国の勢力圏の拡大に移り、平成25(2013)年4月には尖閣諸島の領有を「核心的利益」というまでになった。中国はそれを強調することで、決戦による解決を念頭に置いていることを内外に知らしめた。

 

この間、平成22年9月の中国漁船による海上保安庁の巡視船への意図的衝突事件、24年9月の尖閣諸島3島国有化で生じた中国の反日暴動などを通して、中国は日本との間接的戦法(戦わずして勝つ)の有利を学んだと思われる。

 

巡視船への衝突事件で日本が中国漁船の船長を逮捕したことに対し、中国は即時釈放を要求した。日本が応じないと分かると中国に依存していたレアメタル(希少金属)の輸出を停止し、さらに会社員4人を軍事地区の写真撮影をしていたとのかどで逮捕した。この措置に驚いた当時の菅直人首相は屈服し、船長を釈放してしまったのである。中国側にはまさに「戦わずして勝つ」であった。

 

中国はその後も尖閣諸島海域に入る日本の漁船や巡視船をしつこく牽制(けんせい)してきた。日本は、中国の徐々に進める攻勢に対して巡視船大型化と増加によって対応したが、中国の巡視船の方が上回っていた。そして日中の差はいつの間にか深刻な状況になった。

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追いつかない日本の対応

 

尖閣諸島周辺に現れる中国の公船は長い間2隻体制であったが、平成29年から4隻体制を中核にしたようだ。これが常態化し、尖閣諸島を警備する上で日本にとっては重荷となった。また海域に来る中国公船の頻度も徐々に増え、今年の4月から8月には数隻の公船が代わり合って接続水域に侵入した日数を合わせると111日にもなった。さらに昨年11月以来、中国海軍の艦艇が尖閣周辺を哨戒する海上保安庁の監視機に対して「そこは中国の領空だ」という警告を発するケースが4回確認されたという。

 

中国の巡視船は、中国政府の交通運輸部下にある海事局に属する巡視船「海巡」にしろ、中国海軍下の海警局に属する巡視船「海警」にしろ、いずれも海上保安庁の巡視船より大型である。

 

中国の巡視船は尖閣諸島海域に入ってくる日本漁船に対して、「中国領海での違法操業を取り締まるため」とか「法に基づき追尾・監視するため」とかと警告して牽制するようになった。いずれ中国は、尖閣諸島海域に入ってくる日本の漁船や巡視船に発砲して威嚇するようになるだろう。

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紛争中の領域が話し合いで平和裡に解決されることはめったにない。ロシアによる北方領土、韓国の竹島奪取など、皆そうである。日本は、平和的解決を原則に交渉するが事態は日本側に不利になっている。中国も機会を見て尖閣諸島を奪取しようとするであろう。

 

 

日本は「戦わずして」守れ

 

日本人はいいかげんにこのことに気づき、新たな対処法をとるべきではないか。まず第一に、尖閣諸島における日本の実効支配体制をしっかり作っておくべきである。尖閣諸島に日本人を住まわせれば、国際的にも日本支配の説得力は強化できる。臨時停泊港、簡易気象観測所、ヘリ発着基地、簡易宿泊施設、観光施設などを構築すべきである。天気予報に尖閣地域を含めてはどうか。中国は非難するであろうが、日本は敢然と実施すればよい。

 

第二に、中国の経済制裁をかわすため、日本は対中経済依存度を低める努力をし、逆に中国の対日依存度を高める品目を作っておくべきである。

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第三に、近代において日本が明治28(1895)年に閣議決定で尖閣諸島を沖縄県に編入した当時を含め、中国は領有権を主張したことがないこと、かつては約200人の日本人が住んでカツオ節工場を持っていたこと、中国は昭和28(1953)年1月の人民日報では尖閣諸島を日本領として扱っていたことなど歴史的事実をもっと積極的に喧伝(けんでん)すべきである。

 

第四に、尖閣諸島ないしその海域で日中の軍事衝突があった場合、米国のバイデン次期大統領は日米安保条約第5条に基づき、日本を支援すると確約したが、両国はそのための協議体制を早急に作るべきである。

 

こうして日本こそ「戦わずして」尖閣諸島を守るべきである。

 

筆者:西原正(平和安全保障研究所理事長)

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2020年11月16日付産経新聞【正論】を転載しています

 

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