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日本は新型コロナワクチン開発で取り残された

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新型コロナウイルスワクチンの高齢者への接種が4月から始まる。新型コロナ対策の焦点として注目が集まる中、諸外国に比べ、接種が遅れたことの理由の一つに、海外製薬企業への依存が指摘されている。では、なぜ国産ワクチンの開発は遅れてしまったのか。「周回遅れ」とも揶揄(やゆ)される中、国産を開発する意義は何か。供給体制を整備するために今後、どういった施策が必要なのかをコンサルティング会社「ボストン・コンサルティング・グループ」の武田俊彦シニア・アドバイザーに聞いた。

 

武田俊彦氏

 

 

武田俊彦氏「国防の観点から捉えよ」

 

世界各国は国防意識を持って、感染症対策を行ってきた。米国ではバイオテロ防衛の意味もあり、ワクチン開発などの研究開発費を企業に支援し続けてきた。日本もワクチン開発を、国防の観点から捉えなければならない。

 

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ところが近年の日本のワクチン産業は、財団法人など特定の組織が担い、既存のワクチン生産を続ける程度で、資金力に勝る巨大製薬企業が先駆的なワクチンの開発を進める国際的な潮流から取り残されてきた。その結果、新型コロナワクチン開発でも世界に後れを取ることになっている。

 

 

厚生労働省もこれまで、国産ワクチンの開発力を高めるために議論を重ねてきた。新型インフルエンザへの脅威から平成19年に「ワクチン産業ビジョン」を策定、28年にはワクチンなどの安定的な供給を目指して「ワクチン・血液製剤産業タスクフォース顧問からの提言」を行い、大手製薬企業の産業参入を促した。ただ、企業にとって、ワクチンは将来性が見通しにくい事業で、思ったように業界再編が進まなかった。

 

疾患の治療に必要な医薬品の場合は、医療保険制度の中で、薬価が定まることから、企業は収益の予想を立てて経営することができるが、健康な人に接種する予防ワクチンは薬価制度の枠外にあり、その収益は、定期接種に選ばれるかどうか、備蓄として国に買い上げられるかどうかなどに大きく左右される。つまり、ワクチン事業の成功は国の政策によるところが大きく、経営の予見性が低いことが、企業の参入や研究開発への投資を難しくしていた。

 

 

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ただ今回、国は国産ワクチンを実現させるために、従来に比べて異例ともいえる大規模な予算を投じて戦略を立てている。研究費や生産設備投資への助成、さらに、治験(臨床試験)を実施するための費用助成も1200億円計上した。「全量買い上げ」のような仕組みも必要だ。実用化のめどがたっても、全量買い上げなどの保証がなければ、企業は莫大(ばくだい)な費用を必要とするワクチン開発を全力で続けることはできない。それでは、これまで国内でワクチン産業が育たなかった苦い経験の繰り返しになる。

 

国はそもそも、ワクチン産業を、外国企業による直接投資を厳しく審査する「対内直接投資規制」の対象にしてきた経緯もある。いわば国策産業としての位置づけだ。であるとすれば、政府による中長期的な政策が必要となる。また、現在、国は海外製薬企業と契約を結びワクチンを購入しているが、もし、毎年接種が必要になった場合、数千億円を超える費用を毎年海外に出すわけにはいかない。そういった意味でもより安価で安心できる国産ワクチンの開発が待たれる。

 

政府は今こそ、民間企業と協調し、経営にも理解を示しながら支援を行い、わが国のワクチン政策を再構築すべきではないだろうか。

 

聞き手:安田奈緒美(産経新聞)

 

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たけだ・としひこ グローバルに展開するコンサルティング会社「ボストン・コンサルティング・グループ」シニア・アドバイザー。東京大法学部卒。昭和58年厚生省入省。大蔵省主計局、日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューヨーク事務所出向などを経て、厚生労働省で医薬・生活衛生局長、医政局長などを歴任した。平成30年退官、31年1月から現職。

 

新型コロナワクチンの接種を進めるため、政府は現在、米ファイザーと英アストラゼネカ、米モデルナと契約を結んでいる。2月には国内で初めてファイザー製の新型コロナワクチンが承認され、接種が始まった。残る2社も、3月までに国内での承認申請を行っている。

 

国内企業で最も開発が進んでいるのが創薬ベンチャーのアンジェス(大阪府茨木市)で、治験(臨床試験)の最終段階の手前である第2/3相試験を実施中。これに、第1/2相の塩野義製薬が続く。第一三共とKMバイオロジクス(熊本市)も今月中に治験を始める予定だ。

 

世界保健機関(WHO)のデータによると、世界で80種以上の治験が進んでおり、最終段階の第3相試験に入っているワクチンは20種近く。国内の開発状況は見劣りするものの、大阪健康安全基盤研究所の奥野良信理事長は「国内企業は着実に開発を進めるべきだ。国内で安定供給される多様なタイプのワクチンの中から国民が選択できるのがベスト」と話している。

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海外で行う治験には莫大な費用が必要なことから、政府は令和2年度第3次補正予算で1200億円を計上し、費用を補助する。アンジェスと塩野義、KMバイオ、第一三共が対象。

 

 

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