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日本国内にも迫る中国の手 内モンゴルの人権侵害 日本も対応を

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中国当局が内モンゴル自治区で進めるモンゴル族の言語や文化の“剥奪政策”と連動するように、日本国内に住む自治区出身者への脅迫が続いている。自治区内で起きている中国による人権迫害の実態を広めないよう迫っているのだ。かつて自治区の一部は日本の支配地域で歴史的に関係が深いこともあり、自治区関係者は日本に対して中国の人権弾圧への強い対応を求めている。

 

「中国共産党が南モンゴルで深刻な人権侵害を行っていることを日本の皆さんにも伝えていきたい。日本人と団結して、香港やチベット、ウイグル人と肩を並べて戦っていく」

 

今月9日、内モンゴル自治区の出身者ら約30人が東京・西麻布の中国大使館周辺でデモ活動を行い、参加者の1人はこう訴えた。主催団体は自治区の民族学校でのモンゴル語による授業の復活、自治区への漢人の移民政策の停止などを求める声明文を大使館に投函(とうかん)した。

 

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約2500万人が暮らす自治区では「文化的なジェノサイド(民族大量虐殺)」への危機が高まっている。中国政府は昨年6月、自治区内でのモンゴル語教育を廃止する政策を決定し、昨秋から小中学校で使われる教科書をモンゴル語から漢語(標準中国語)に切り替え始めた。

 

学校ではモンゴル帝国創始者のチンギスハンの肖像画の掲示も制限されている。民族言語や文化の喪失を懸念するモンゴル族の保護者や教員らによる授業のボイコットや抗議の動きに対し、中国当局は弾圧政策を強化。米ニューヨークの人権団体「南モンゴル人権情報センター」によれば、自治区内で約1万人のモンゴル族が収監されたという。

 

中国当局は日本国内で暮らす自治区出身者に対する“締め付け”も強めている。

 

国内外の自治区出身者でつくりモンゴル文化の保護運動などを行っている「世界モンゴル人連盟」理事長の楊海英・静岡大教授によると、自治区出身の留学生のもとに中国当局関係者が訪れ、自治区で始まった中国語教育の強化策をめぐる見解を発信しないよう脅しをかけているという。

 

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また、留学生らが自治区で暮らす家族と「ビデオチャット」で話していると突然、中国当局関係者と思われる見知らぬ人が割り込んで、楊氏らの活動内容について聞きこんでくることもあったという。

 

言語政策が強化される以前から、日本国内でも自治区出身者は中国当局から不当な圧力を加えられていた。

 

中国の自治制度を研究する男性は自治区内で、中国国内で公開されている関連資料を収集しただけで数十日間収監された。中国政府に対する抗議活動への不参加、中国の抑圧政策に関し日本メディアの取材に応じないことなどを条件に釈放されたという。

 

日本国内で自治区内の植生などを調べていた別の農業研究者も自治区に戻った際に拘束されたという。自治区内で中国当局に逮捕された経験を持つ留学生の1人は産経新聞の取材に「自然環境は中国共産党政府による乱開発で大きく変わった。自然科学でも社会学でも現代の南モンゴルを研究したら、政治問題に結びつき、中国当局にとっては不都合になる」と指摘。「家族を自治区に残しているので、自治区出身者にも逮捕や拷問されたことはいえない」とも語った。

 

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内モンゴル自治区の一部は先の大戦前は日本の支配下だった。春には大豆からみそを作るなど日本由来の風習が残っている家庭もある。日本は社会インフラの整備にも努め、親日感情も根強いという。一方、日本国内では香港や新疆(しんきょう)ウイグル自治区での民族迫害に比べ、モンゴル族の人々の窮状に対する関心はそれほど高くない。

 

楊氏は「日本にとっては(内モンゴル自治区に関与すると、戦時の)支配との『負の歴史』につながりかねず、避けてきたのではないだろうか。われわれは『謝罪しろ』『賠償しろ』ということはないのだが」と複雑な心境をのぞかせる。

 

一方、内モンゴル自治区の漢民族への同化政策はとどまるところを知らない。昨秋に始まった言語政策への反発は自治区全土に広がっているが、習近平国家主席は今年3月、自治区の代表らによる会議に出席し、標準中国語(漢語)の普及推進を指示し、批判は徹底的に押さえ込む方針を示している。

 

日本国内では、内モンゴル自治区と同じく中国当局の弾圧下にあるウイグルやチベット、香港の人々を支援する議員連盟は存在するが、内モンゴル自治区問題に対応した議連はなかった。

 

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これに危機感を深めたのが自民党の山田宏参院議員やハーバード大学留学時代にモンゴルのエルベグドルジ前大統領と同級生であった上野両らだ。

 

山田、上野両氏は今年3月に楊氏を招いて、内モンゴル自治区の人権状況や日本との歴史に関する勉強会を開き、高市早苗前総務相を会長に4月21日、南モンゴルを支援する議員連盟を発足させた。自治区出身者がずっと求めていたことで、10年来の悲願だった。

 

「やっと日本が動くよ。文化大革命時代に(自治区内で)殺された人々の魂が天国で喜びます」

 

その日の夜、東京・新宿のモンゴル料理屋で内モンゴル出身者らが羊肉を囲み、ささやかな祝杯を挙げた。出席者の1人がしみじみこうつぶやくと、日本人の長年の支援者も感極まって涙を流した。

 

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議連設立について、中国の弾圧に抗議する団体「南モンゴルクリルタイ」幹部のオルホノド・ダイチン氏は産経新聞の取材に「人権問題は国内問題ではなく、国際問題であるべきだ。日本は(内モンゴル自治区内で人権弾圧に関与した中国の当局者らを制裁する)人権法を出してもらいたい」と語った。関係者は自民党有志の議連に対し、早期の超党派への発展改組を心待ちにしている。

 

筆者:奥原慎平(産経新聞政治部)

 

 

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