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造船各社が「環境船」開発を加速 CO2排出抑制、中韓などに対抗

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造船各社が、二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガスを排出しない「環境対応船」の開発を加速している。川崎重工業などが、燃料電池で動く船の開発に着手。国内首位の今治造船(愛媛県今治市)や2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU、横浜市)は、アンモニア燃料船に照準を合わせる。国内造船各社は、中国勢や韓国勢の価格攻勢で苦戦が続く。脱炭素化の進展とともに需要拡大が見込まれる環境船の開発で先行し、巻き返しを図りたい考えだ。

 

川崎重工業は、日本郵船やENEOS、東芝傘下の東芝エネルギーシステムズなどと燃料電池船を開発。2024年に実証実験を始める計画だ。

 

全長約25メートル、旅客定員100人程度の中型観光船に、東芝エネルギーの燃料電池を複数搭載する。今年から船舶や燃料となる水素供給設備の設計に着手。23年に建造、翌年には横浜港沿岸で実証運航を始める。商業利用が可能な規模の燃料電池船の開発は日本初という。

 

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川重は、ほかにも昨年10月に大容量リチウムイオン電池で動く「電動タンカー」の推進システムを商船三井系の旭タンカー(東京都千代田区)から受注した。電池に加え、推進制御装置や電力制御装置などで構成。船舶建造は、興亜産業(香川県丸亀市)と井村造船(徳島県小松島市)が担う。電動フェリーは実用化済みだが、電動タンカーは世界初となる。

 

アンモニア燃料船の開発も進む。JMUは、日本郵船などと23年度にも開発する計画。今治造船も三井E&Sホールディングスや伊藤忠商事などと開発中で、24年までに船舶を保有する共同出資会社を設立し、船会社などに貸し出す。今治とJMUは、1月に設立した営業設計の共同出資会社でも環境船開発に取り組む方針だ。

 

アンモニアは燃焼速度が遅く窒素酸化物((NOx)対策も必要だが、水素と同じく燃焼時にCO2を排出しないうえ、輸送や貯蔵の技術がすでに確立されている。今治やJMUは世界に先駆けて実用化し、中韓勢への優位性を確保したい考えだ。

 

環境船では他にも国内造船9社と日本海事協会が、昨年12月に業界横断で開発や調査研究を行う組織を設立している。

 

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日本船舶輸出組合によると、新型コロナウイルス感染拡大による商談停滞もあり、20年の輸出船契約実績(受注量)は前年比約20%減の733万総トンと低迷。受注残を示す手持ち工事量は、適正とされる2年分の半分程度まで落ち込んでいる。

 

造船業界では、日中韓で新造船建造量の約9割を占めている。もっとも、ここ数年は中韓が35%前後で拮抗しているのに対し、日本は20%前後と水を空けられており、その差は徐々に広がりつつある。特に最近は新型コロナの感染拡大が続く中、経済が独り勝ち状態となっている中国勢の勢いが目覚ましい。また中韓両政府による「おきて破り」の支援も、日本が競争で押される要因の1つとされている。

 

中韓は業界再編でも日本に先行している。中国では19年に国内首位と2位が統合し、世界シェア3割超の中国船舶集団(CSSC)が誕生。韓国でもCSSC誕生まで世界首位だった韓国造船海洋(旧現代重工業)が、大宇造船海洋の統合を目指している。それに対し、日本も提携の動きは広がっているものの、ドラスチックな再編や巨大企業の誕生には至っていないのが現状だ。

 

一方で23年以降はCO2排出規制がさらに強化され、規制を満たせない既存船からの置き換えが進む見通し。このため日本造船工業会の斎藤保会長(IHI相談役)は「日本の技術力を生かし、環境規制への対応を中心に最大限の努力をする」と強調するが、環境船には規模で上回る中韓の大手なども注目しており、今後は開発競争が一層激しくなりそうだ。

 

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筆者:井田通人(産経新聞経済本部)

 

 

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