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日独の相違、発信と教育を

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ベルリンの公園では2月27日、ロシアのウクライナ侵攻に抗議し、
プーチン露大統領をナチス・ドイツのヒトラーに似せた肖像も掲げられた(ロイター)

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ウクライナ政府のツイッターの公式アカウントが昭和天皇の肖像をナチス・ドイツのヒトラーらとともにナチズム、全体主義の象徴と描く動画を発信した問題では、政治家も含む多くの国民から怒りや失望が表明された。SNS上で「もうウクライナを支援しない」「ウクライナの正体が分かった」などと強い反発の声が多数、飛び交ったのも当然だろう。

 

日本政府も黙ってはいられず、磯崎仁彦官房副長官は4月25日の記者会見で「同列に扱うことは全く不適切で極めて遺憾だ」と指摘し、直ちに削除するよう申し入れたことを明かした。

 

ただ、筆者はこの件について、不愉快ではあるものの特段のショックはなかった。3月16日にウクライナのゼレンスキー大統領が米議会でのオンライン演説で、ロシアの残虐行為を日本軍の真珠湾攻撃になぞらえた際もそうだった。

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3月16日、ワシントンで、ウクライナのゼレンスキー大統領のビデオ演説を前に立ち上がって拍手する米連邦議会の議員ら(AP)

 

国際社会の歴史認識や日本に対する知識レベルは所詮、その程度の浅薄なものだと普段から思っているので、驚きようがない。

 

そして現状がそうである理由の大半は、日本が正しい情報の発信を怠ってきたことと、政府が教育や広報などを通じて、国民にきちんとした事実関係を教える努力をしてこなかったことにあるのではないか。

 

むしろ他国の歴史観を無批判に受け入れ、あるいは特に反論せず無抵抗でやり過ごそうとしてきたから、間違った見解や偏見が定着していったのだろう。

 

動画は結局、日本の抗議を受けて4月24日に修正され、ウクライナ側は外交ルートで謝罪した。ここで注目したのは、コルスンスキー駐日大使が25日のツイッターで「制作者の歴史認識不足。深くおわび申し上げます」と記すなど、「歴史認識不足」について言及していたことである。

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また、翌26日には自民党の佐藤正久外交部会長が動画について、「(投稿から)1カ月間掲載されたままになっていて、外務省が気が付かなかった。情報戦で負けている」と政府の対応の遅さを批判した点にも着目した。

 

日本政府は情報発信だけでなく、発信された情報のチェックも苦手だということになる。今後、改めていくべき課題といえよう。

 

そもそも動画でヒトラーと昭和天皇が並べられたのは、先の大戦におけるドイツと日本は同類だとみなされているからである。日本でも以前はよく、同じ敗戦国であるドイツを見習えという議論があった。これも基本的に、両国の行為を同列に並べている。

 

だが、その見方は正しいのだろうか。4月19日の本紙正論欄で村井友秀東京国際大特命教授も書いていたが、ドイツと日本とでは決定的な違いがある。

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両国はともに戦後、軍事裁判で指導者らが裁かれて処刑された。だが、ドイツのニュルンベルク裁判では16人に適用されたにもかかわらず、日本の東京裁判では検事側が適用したくて調査しても1人にも適用できなかった罪状がある。

 

日本が遂行した戦争には、ドイツのユダヤ人絶滅政策のようなジェノサイド(民族大量虐殺)計画はどこにも見当たらなかったため「人道に対する罪」には問えなかったのである。たとえ枢軸国同士だといっても、ヒトラーの戦争と日本の戦争がいかに性質が異なるものだったかが、この一点でもよく分かる。

 

今回の動画騒動で、この事実について日本はもっと対外発信すべきだし、国内教育にも取り入れるべきだと改めて感じた。

 

筆者:阿比留瑠比(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

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2022年4月28日付産経新聞【阿比留瑠比の極言御免】を転載しています

 

この記事の英文記事を読む

 

 

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