中国に禁輸された高級魚を日本に輸入する動き 「民主主義の魚」を食べ台湾を応援
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中国当局が6月10日、台湾産の高級魚「ハタ」の禁輸を突然発表した。ハタの産地である台湾南部の屛東(へいとう)県や高雄市などで中国に輸出する予定だった数千トンのハタは行き先がなくなり、養殖業者たちは途方に暮れている。そんな中、日本の魚養殖業者らが「私たちが助けよう」と名乗り出て、ハタの輸入に向け本格的に準備を始めた。関係者は「ハタは和風にも洋風にもおいしく食べられる。日本の潜在的なマーケットは大きい」と話している。
ハタの日本輸入に中心となって動いているのは魚養殖業者、林養魚場(福島県)の会長、林慎平さん。「日本李登輝友の会」の福島県支部長を務めたこともある大の親台湾派で、2011年の東日本大震災の後、台湾各界から福島県など被災地に多額の義援金が送られたことに対し「いつか恩返ししたい」と考えていたという。林さんの呼びかけに、複数の大手すしチェーンがハタの受け入れに興味を示しているという。
台湾で6月、設立された日台交流団体「安倍晋三友の会」の陳唐山会長らの斡旋(あっせん)により、林さん側は屛東県の業者と連絡を取り、値段や輸送ルートなどについて商談を始めている。東日本大震災後の風評被害で、一時、魚が全く売れなくなった苦い経験も持つ林さん。台湾側に「大切に育てた魚がこんな形で売れなくなってしまったみなさんの気持ちは痛いほどわかります。ハタは私が引き受けます。ご安心ください」とのメッセージを送った。
林さんらはサンプルとして2~3トンのハタを輸入し、外食業者などの間で試食し、料理法をアレンジする。その後、台湾に視察団を送り、ハタ養殖の状況などを確認して本格的に輸入を始める。林さんは「味だけではなく、中国に圧迫される台湾を支援したい日本人は今たくさんいる。『民主主義の魚』を食べ台湾を応援しようという流れになれば、大きな需要が生まれるのではないか」と言う。
屛東県のハタ養殖業者、陳建翰さんは「大変ありがたく感激している。これを機にぜひ日本のみなさんにハタのおいしさを知ってほしい」と話している。
中国の税関総署は台湾産ハタについて、禁止薬物の成分検出を理由に一時輸入停止を発表したが、台湾側は「事実無根」「国際慣例に反する」と猛反発している。中国は昨年も「害虫検出」などを理由に台湾産パイナップルを禁輸した。
筆者:矢板明夫(産経新聞台北支局長)
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