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アポロ計画から半世紀 無人月宇宙船打ち上げ 3人の「乗客」搭乗

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人類の月への挑戦が今夏、再始動する。米航空宇宙局(NASA)は、有人月着陸に向けた新型宇宙船「オリオン」の無人テスト飛行を実施予定で、月や火星の有人探査「アルテミス計画」の第一歩を踏み出す。1972年のアポロ17号で人類が最後に月面に降り立ってから半世紀。人類は月で生活ができるのか。NASAの命運をかけたテスト飛行に注目が集まっている。打ち上げは当初8月29日に予定されたが、技術的な問題で9月3日に延期された。

 

 

宇宙船の性能テスト

 

アルテミス計画は、米国が主導し、日本も参画する国際プロジェクト。月面基地や月を周回する宇宙ステーション「ゲートウェイ」を建設し、ここを拠点とする火星への有人探査を目指している。

 

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NASAはアルテミス計画の実現に向け、2011年退役のスペースシャトル以来となる有人宇宙船「オリオン」と、その打ち上げに使う超巨大ロケット「SLS」の開発を進めてきた。今回のミッション「アルテミスⅠ」は、それぞれの性能を確かめるテスト飛行となる。

 

飛行計画によると、オリオンは無人で米フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられた後、軌道変更を行いながら地球を離れ月へ向かう。月を2周し、着陸はせずに地球へ帰ってくる。帰還時には、時速約4万キロで大気圏に再突入し、2760度の高温に耐えて米カリフォルニア沖に着水する。

 

オリオン宇宙船のイメージ(NASA提供)

 

飛行期間は約4~6週間。人類が開発した中でもっとも遠くまで旅をする宇宙船となる。

 

オリオンを月に送り込むSLSは、全長98・3メートル、重量2603トン(燃料込み)の2段式。最大推力は約4千トンに達し、アポロ計画で宇宙飛行士たちを月へ運んだサターンⅤロケットの推力を上回る史上最強のロケットだ。

 

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その先端に搭載されるオリオンは93億ドル(約1兆2千億円)をかけて開発。飛行士が乗るクルーモジュールと、電力や推力、水・空気などを供給するサービスモジュールからなる。

 

クルーモジュールはアポロ宇宙船とよく似た円錐(えんすい)型で、高さ約3・4メートル、直径約5メートル。4人乗りで、生命維持システムやトレーニング機器、熱シールドなどを備え、飛行士が最大21日間生活できる。

 

一方、サービスモジュールは欧州宇宙機関(ESA)が開発を担当。大小33基のエンジンのほか、メインエンジンの故障など非常事態に対応するバックアップ機能も備えている。サービスモジュールは大気圏再突入の直前に切り離され、クルーモジュールのみが帰還する。

 

 

「乗客」のミッション

 

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オリオン宇宙船に搭乗するのマネキン人形のイメージ図(ESAのホームページより)

 

今回は無人飛行だが、3体のマネキン人形が「搭乗」する。月は地球から約40万キロ離れており、将来の有人飛行に備え、深宇宙の環境が人体に及ぼす影響を詳細に調べる必要があるためだ。

 

その最大の健康リスクが宇宙放射線への被曝(ひばく)だ。宇宙放射線は地球の大気と磁場に遮られて地上にはほとんど届かない。しかし、国際宇宙ステーション(ISS)のある上空(高度約400キロ)では地上の250倍の放射線リスクがあり、地球の磁場から離れた惑星間空間では最大700倍もの放射線にさらされると予測されている。

 

オリオン宇宙船の座席に固定され、打ち上げを待つマネキン人形「ムーニキン・カンポス」船長(NASA提供)

 

オリオンの司令官席に座るのは「ムーニキン・カンポス」船長。人間の全身を模した男性型で、アルテミス計画で宇宙飛行士らが着用するオレンジ色の船内宇宙服を身にまとう。服には放射線センサーが取り付けられている。

 

助手席には、女性の体を模した「ゾハル」と「ヘルガ」が搭乗。骨や軟組織、肺の密度を模擬したプラスチックでできており、肺や子宮など放射線の影響を受けやすい部位に5600以上の放射線センサーが備え付けられている。一般的に女性の体は放射線に対して弱く、近年は女性飛行士が増加傾向にある状況に対応する。

 

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オリオン宇宙船に搭乗する女性型マネキン人形の「ゾハル」と「ヘルガ」。ゾハルは放射線防護ベストを着用するが、ヘルガは着用しない(StemRad社提供)

 

ゾハルだけが新たに開発された放射線保護ベストを着用。2体の被ばく量を比較することでベストの性能を評価し、飛行士の健康を守る技術の開発につなげる。

 

小さな生物を使った実験も行われる。クルーモジュール内に格納されたコンテナの中で、植物の種子の栽培や、真菌のDNA修復、藻類の遺伝子発現などが調査される。将来人類が深宇宙で暮らすためのヒントを得るのにも役立つという。

 

 

有人探査へ

 

アルテミスⅠを皮切りに、月への有人探査が本格的に幕を開ける。

 

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次のステップとなる有人試験飛行「アルテミスⅡ」では、4人の飛行士がオリオンに乗り、月を周回して地球に帰ってくる。実際に飛行士が月面に降り立つ「アルテミスⅢ」は2025年以降に実施される予定。

 

月面着陸を果たした後、NASAは月上空に探査の拠点となるゲートウェイを建設し、20年代後半にも水資源の探索などの本格的な月探査を始める計画。NASAのネルソン長官は40年までに有人火星探査を実現させる意向を示している。

 

日本はゲートウェイの建設や月面車の開発などを担当する方針で、20年代後半以降には日本人飛行士にも月面着陸の機会が訪れる見通しだ。現在、月探査を担う次世代飛行士の選抜試験が進められている。

 

宇宙開発の歴史に詳しいJAXAの的川泰宣名誉教授(80)は「今回の無人試験飛行は有人ミッションにつなげるための第一歩だ。NASAの探査機操作技術はアポロ時代と比べると抜群に向上している。軌道計画は複雑だが、月の重力などを使って精密にオリオンを制御できるかどうかに注目したい」と話している。

 

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筆者:有年由貴子(産経新聞)

 

 

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