【主張】国連人権報告書 ウイグル弾圧は許されぬ
任期最後の記者会見に臨むバチェレ国連人権高等弁務官
=8月25日、スイス・ジュネーブ(ロイター)
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国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が中国新疆ウイグル自治区の人権状況に関する報告書を発表した。
報告書は、少数民族ウイグル人に対し、テロ対策名目で「深刻な人権侵害が行われている」とした。差別的で恣意(しい)的な身柄拘束などは、「人道に対する罪に相当する可能性がある」と指摘し、恣意的な拘束を速やかに解くことを中国政府に勧告した。
ウイグル人弾圧の実態を国連が公式に認めた意味は重い。中国は報告を真摯(しんし)に受け入れ、一連の弾圧を直ちにやめるべきだ。同時に日本を含む国際社会は、状況が改善されるよう、連携して中国に圧力をかけていく必要がある。
報告書は、ウイグル人らを職業訓練の名目で収容した施設について、「自由に退所できたり、一時帰宅を許されたりした人は一人もいなかった」とした。施設が事実上の強制収容所となっていることを示すものだ。ウイグル人らが同自治区で拷問や性的暴行などを受けたと訴えていることについても「信憑(しんぴょう)性がある」と認めた。
中国政府には、拷問などの人権侵害の疑惑を速やかに調査することや、行方不明者の所在を確認すること、ウイグル人らに対する差別的な政策や法律の撤廃などを求めた。ただ、欧米諸国が非難するジェノサイド(集団殺害)の認定には踏み込まなかった。
中国側は会見で、報告書について「海外の反中勢力によるでっち上げだ」と猛反発した。だが、報告書は、弾圧されたウイグル人の証言や流出した内部文書などの証拠を基に作成された。中国の虚言は国際社会に通用しない。
報告書は、中国の圧力で再三延期された。発表されたのは、バチェレ人権高等弁務官の任期が終了する約10分前の8月31日深夜というタイミングだった。
残念なのは日本政府の歯がゆい反応である。松野博一官房長官は会見で、報告書を「評価する」としつつ、「自由、基本的人権の尊重、法の支配が中国においても保障されることが重要だ」と述べるにとどめた。今年が日中国交正常化50年であることを意識して抑制したのだとしたら、中国に足元をみられるだけである。
岸田文雄政権は、中国の人権状況について独自の調査を進め、ウイグル人への弾圧を即刻やめさせなければならない。
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2022年9月4日付産経新聞【主張】を転載しています
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