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柔道・井上康生氏「子どもたちと柔道の意義 今夏、小学生の全国大会廃止の訳」

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8月28日に行われた全日本小学生柔道育成プロジェクト2022
参加者に技について解説する井上理事長(中央、白い柔道衣)
photo/ JUDOs

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Japan Forward読者の皆さん、こんにちは。

 

日本では秋を迎え、過ごしやすい日が続いています。このコラムを皆さんが読まれる頃、私はウズベキスタンの首都タシケントを訪れています。10 月6〜13日まで行われる世界柔道選手権に、日本代表チームの副団長として参加するためです。2024年パリ五輪へ向けて重要な一歩となります。日本代表選手が最高のパフォーマンスを発揮できるよう全力でサポートしたいと思っています。

 

さて今回は、子どものスポーツについて考えてみたいと思います。今年3月、全日本柔道連盟は、毎年夏に行ってきた小学生の全国大会のひとつを廃止しました。廃止の理由は「行きすぎた勝利至上主義が散見されるため」です。近年、子どもの指導現場では、勝利に重きを置くあまり、必要のない減量をさせたり、勝つために反則ギリギリの技術を使うよう指導したり、試合の場で審判のジャッジを尊重しないような態度をあらわにしたり、といった問題が起きていました。全日本柔道連盟はこうした事態を重く見て、子どもを指導するにあたって大切なことは何か、一度立ち止まって考え直すことが必要であると判断、大会の廃止に踏み切ったのです。

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井上康生氏

 

大会の廃止はとても残念なことでしたが、私はやむを得ないことだったと思います。やはり、勝つことに過剰な価値を置く指導には問題があると思うからです。ただ、このことに関して起きた議論の中で、子どもの柔道(スポーツ)に、試合は不要なのではないか、という意見が挙がりました。試合がなければ、勝利にこだわることはなくなるはずで、勝利至上主義など生まれないはずだ、と。しかし、私はそうは思いません。子どものスポーツにも試合が必要だと思います。なぜなら試合は、子どもたちが日々の練習で努力し、身につけた技術を発表する場であるからです。また、試合という目標があるからこそ、厳しい練習も頑張ることができます。その過程で得るものは計り知れないほど多様で豊かであり、試合という場を経験することは、勝敗に関わらず本人の自信につながり、ひいてはそれが生きる力になっていくと思うからです。

 

8月末、廃止となった小学生の大会の代替企画として、「全日本小学生柔道育成プロジェクト2022」というイベントが開催され、全国から集まった小学生が練習試合を行ったり、ルール講習を受けたりして、柔道を通じた交流を行いました。このようなイベントは思い出作りのひとつになりますし、試合だけではない柔道の楽しみさを伝えていくための活動としてこれからも行われていくでしょう。このようなイベントを行いながら、今後、どうしたら子どもたちが健やかな発達を遂げながら柔道に親しんでいくことができるか、私たち大人は、真剣に議論し、課題解決に取り組んでいかなければならないと思います。

 

ウクライナの子どもたちとの柔道教室で記念撮影。講師を務めた井上理事長(中央、左)とリオ五輪100kg級銅メダリストの羽賀龍之介選手(中央、右)photo/JUDOs

 

ウクライナの子どもたちと柔道交流

 

また、8月下旬には、ウクライナから日本に一時避難していた12人の子どもたち(小学生〜高校生)を対象にした柔道教室にも講師として参加しました。この教室では羽賀龍之介選手(2016年リオ五輪100kg級銅メダリスト)も講師を務め、子どもたちと柔道を通した楽しいひとときを過ごしました。このとき私が思っていたのは、戦火から逃れてきたウクライナの子どもたちが、わずかな時間であっても戦争のことを忘れ、子どもらしく、のびのびと柔道を楽しんでほしいということ、そして、このような交流の機会を持つことができたのは、柔道があったからこそだということでした。スポーツには国境も文化も何もかも超える力があり、子どもの成長に大切な役割を果たすものであることを再確認しました。

 

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冒頭でも触れたように、ウズベキスタンで世界柔道選手権が行われます。世界中の選手たちがパリ五輪へ向けて動き出しています。皆さん、ぜひ選手たちへのご声援を宜しく御願い致します。

 

井上康生
NPO法人JUDOs理事長

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