太陽光パネルとウイグル強制労働問題
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「中国製の商品をできるだけ買わないことが、強制労働をさせられているウイグル人を少しでも助けることにつながる」。2008年に日本に帰化したハイレットさんの言葉が、胸に響く。評論家の三浦小太郎さんと日本ウイグル協会の共著『日本人になったウイグル人たちに中国がやっていること』の一節である。
国際エネルギー機関(IEA)の2022年7月の報告によると、中国は太陽光発電に必要な主要要素の世界の生産能力の8割超を占める。そのうち多結晶シリコンは、かねて人権抑圧・強制労働問題が指摘されてきた新疆(しんきょう)ウイグル自治区だけで世界全体の4割を生産している。
それでも米国は2022年6月、同自治区からの輸入を禁じるウイグル強制労働防止法を施行した。欧州連合(EU)も同様の法制化の検討を始めたという。米上院財政委員会は12月22日、日本や欧米の自動車大手8社に対してウイグルでの強制労働に関する対応の確認を要請した。
世界の潮流に鈍感なのが日本の国会である。参院は12月5日、ウイグルなどの人権状況を巡り当該国政府に説明責任を果たすよう求める決議を採択したものの、2月の衆院決議と同じく「中国」「人権侵害」といった文言の明記は見送った。
さらに時代に逆行したのが東京都だろう。新築戸建て住宅に太陽光パネル設置を義務付ける条例を設けたが、今後も中国からの輸入に頼るのか。条例が施行される2025年4月までに、中国の人権状況が劇的に改善される見通しはあるのか。サプライチェーン(供給網)は確保できるのか。疑問は尽きない。
「中国製を買わないという明確な意思を示して、私たちの同胞を助けてほしい」。ハイレットさんの訴えに、小池百合子都知事はどう答えられるのか。
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2022年12月24日付産経新聞【産経抄】を転載しています
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