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高市氏ピンチ 経済安保の機密扱い資格に黄信号

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閣議に臨む(左から)斉藤鉄夫国交相、松野博一官房長官、高市早苗経済安保相=1月13日午前、首相官邸(矢島康弘撮影)

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2022年5月に成立した経済安全保障推進法をめぐり、積み残しの課題となっている機密取り扱い資格「セキュリティー・クリアランス(SC、適格性評価)」の制度化が、23日召集予定の通常国会で焦点となっている。米欧の防衛や情報関連企業と日本企業による共同研究などを進めるため、政府は早期導入を目指してきたが、個人情報保護の観点から慎重論がなお根強く、次の国会で同法改正案の提出が間に合わないとの見方も出ている。

 

「今の作業状況を見ると、通常国会とは言い切れない」

 

高市早苗経済安全保障担当相は12月20日のBSフジ番組で、SCの制度化に向けた改正案の提出時期が見通せないと打ち明けた。8月の担当相就任当初から制度化を訴えてきたが、調整は難航しているようだ。

 

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SCは、機密情報へのアクセスを一部の民間の研究者・技術者や政府職員に限定する仕組みだ。人工知能(AI)や量子技術など最先端技術に関する機密情報に接する資格を関係者に付与して明確にし、軍事転用が可能な技術や民間の国際競争力に関わる重要な情報が国外に流出することを防ぐ狙いがある。

 

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高市早苗経済安保担当相は経済安保推進法の改正を実現できるか=2022年10月24日午前、衆院第1委員室(矢島康弘撮影)

 

推進法は岸田文雄政権の看板政策で、8月に一部が施行された。12月には政府が重要な物資を安定的に確保するため民間企業に財政支援などを行う「特定重要物資」に、半導体など11分野が指定されるなど整備が進んできた。

 

しかし、SCは同法への盛り込みが見送られたまま現在に至っている。資格を得る際に親族や交友関係、資産や飲酒歴なども審査対象となることが想定されるため、個人情報保護への懸念が強いためだ。

 

同様の議論は、安倍晋三政権下で成立した特定秘密保護法(2014年12月施行)の国会審議でも巻き起こった。当時、野党からは「治安維持法の復活」といった批判が続出した。

 

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次の国会にSCを盛り込んだ改正案を提出した場合、野党が同様に反発する可能性もある。岸田政権は昨年後半から内閣支持率が下落傾向にあり、政府関係者からは「官邸の体力的に、危ない法案は出せないのではないか」といった声も漏れる。

 

しかし、制度化を放置したままでは、日本にとって大きなデメリットになりかねない。

 

SCの制度導入で先行する米国や欧州の主要国は、ハイテク分野で台頭する中国を念頭に、制度を持たない日本との共同研究で機密情報が漏れる可能性を警戒する。先端技術に関わる国際共同研究に日本企業が参加できなくなる恐れもあるのだ。高市氏も「日本企業が海外との共同研究や民間企業同士の取引からはじき出され、ビジネスチャンスをみすみす失うことになる」(同番組)など危機感を訴えてきた。

 

先行導入している国ではどう認識されているのだろうか。昨年12月、来日中だった米国の経済安全保障政策の専門家、リチャード・マーシャル氏に話を聞く機会があった。同氏はNSA(国家安全保障局)などの政府機関で要職を務めた経歴がある。

 

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日本で人権侵害への懸念があることについて、マーシャル氏は「(SCは)情報にアクセスしたい人が、政府に『私のバックグラウンドチェック(身元調査)をしてください』というものだ。互いに同意して調査するのであって人権侵害は起こらない」と解説した。

 

日本では「政府に強制的に身元が調査される」というイメージが強い。しかし米国では、政府と個人が「互いに同意する」という、ある意味で対等の立場でやりとりすることと捉えられているように感じる。

 

高市氏は1月6日の記者会見で、「日本が友好国・同志国と信頼関係を築き、日本の企業がビジネスチャンスを得られるようなSCの検討は進めていきたい」と重ねて強調した。国際情勢が不安定化する今こそ、SCを整備する必要性は高まっている。

 

筆者:太田泰(産経新聞)

 

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