時代を超えた魅力 創業60年の経営者が語る銭湯への思い
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川崎市麻生区の松葉浴場は、1961年の開業以来、時代を超えて地域住民に愛され続けている。高度経済成長期、地域住民に欠かせない憩いの場だった銭湯。時代は令和に入り、日本のほぼ全ての住宅に風呂が普及するようになったが、銭湯は今なお人々を魅了し続けている。一方で、昨今のエネルギー料金高騰やインフレといった経済環境の中で、銭湯は厳しい逆風にもさらされている。創業60年の伝統を誇る松葉浴場の経営者、石塚嘉秀・美智子さんご夫婦に、現代の銭湯事情について聞いた。
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―松葉浴場の開業から今日までの歴史について
松葉浴場は今は亡き先代の社長が1961年(昭和36年3月)に開業しました。今年で62年目になります。当時この場所(川崎市・百合ヶ丘)は土地造成中で、家や公用住宅(※現URの団地が近隣に所在)もなく野原だったそうです。
完成するまでに3年の年月をかけたため「お風呂屋さんがつぶれた」との噂が流れたそうです。本人は時間をかけて丈夫に建てようと思ったそうです。
昭和63年に番台をやめてフロント式へ改装しました。番台だと若い女性が入りづらいと思ったので。
先代の社長からは「開業当時にお風呂付きの家が少なく、自分も満足にお風呂に入れなかったから、みんなにも気持ちよく広々したお風呂に入ってもらいたいと思って松葉浴場を建てた」と聞いたことがあります。
当時は車も少なく、送迎バスも運行していたそうです。
―シャワーしか浴びない国や地域も多い。日本人はなぜ風呂が好きなのか
夏はシャワーだけで十分と言う人もいますが、日本人は生まれてすぐ生湯(初湯)に浸る習慣があります。特に冬は、年々寒さも厳しくなってきています。体の芯から暖まりたいのでしょうね。私は夏に湯船に浸るとさっぱりしますし、気持ちいいです。シャワーだけでは物足りません。
―自宅に風呂があるにもかかわらず、なぜ人々は銭湯に通うのか
銭湯はその土地・地区の憩いの場にもなっております。同じ時間帯で顔見知りになり、挨拶をしたり、たわいのない話をしたり、一人住まいの人は話し相手がいて嬉しいみたいです。背中の洗い流しっこしている情景も見られます。なんといっても広々とした洗い場に満杯のお湯、手足を延ばせる大きな湯船。ゆったり、まったりするからでしょうね。
―ウクライナ侵略で燃料費が高騰してるが、どのような影響があるか
銭湯を運営するには、水、重油、電気、ガスはかかせません。今までにないほどの(エネルギー代の)値上がりが続いています。重油は時に気候の変化にも関係してきます。6月に再度の電気代の引き上げが予定されています。この夏クーラーを使うと経費が更にかさみます。夏が来るのも怖いし、この先どうなるかわかりません。
―銭湯に行ったことがない人に向け、銭湯の魅力を
初めての方は、裸になるのでちょっと抵抗はあると思います。でも一度経験してみてください。やみつき、くせになります。広々とした洗い場、満杯のお湯、は自宅風呂では味わえない程の満足感はあると思います。お客様の中には、「自分の家にも大きなお風呂があるけど、何かが違う、体の芯から温まるんだよね」と気持ちよかった、ありがとうと言って帰られる方もいらっしゃいます。「風邪もひかなくなったよ」と。
近くの銭湯で一度挑戦してみてください。マナー・ルールは守ってね。
昭和レトロな銭湯の楽しみ方
銭湯を楽しむためのポイントをご紹介します。
大きめと小さめのタオルを一枚ずつ用意しましょう。洗面用具(石けんやシャンプーなど)は持参するか、必要なら銭湯で購入することもできます。
銭湯の玄関に着いたら、下駄箱に靴をしまいます。下駄箱の鍵は忘れないように保管しましょう。受付で入浴料を支払いますが、銭湯では現金のみのことが多いため、必ず現金を用意するようにしましょう。
脱衣所で服を脱ぎ、浴場には小さいタオルと石鹸やシャンプーを持っていきます。お風呂に入る前に必ず体を洗いましょう。
体を洗ったら、あとはお湯につかるだけです。体の芯から温まる銭湯のお湯で一日の疲れを癒します。長風呂をするとのぼせる場合があるので、無理をせずに休憩しながらお湯につかりましょう。
ジェットバスがある銭湯や高温のお風呂がある銭湯もあります。冬は高温のお風呂が気持ちいいです。電気風呂では電気マッサージが楽しめますが、好みは分かれるようです。水風呂はサウナや熱いお風呂に浸かった後に入ると、爽快な気分を味わえます。
お風呂を満喫したら、最後に体を軽く洗い流し、体をよく拭いてから脱衣所に入るようにしましょう。
筆者:安達美瑠香(JAPAN Forward編集スタッフ)
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