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【主張】中国の「輸入停止」 対日威圧に毅然と対処を

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北京市内に掲示された中国紙「環球時報」。東京電力福島第1原発の処理水放出計画に対するIAEAの報告書に疑問を呈する1ページ特集を組んだ=7月7日(共同)

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中国の税関当局が日本産水産物への放射線検査を強化し、日本からの鮮魚輸出などが実質的に停止している。東京電力福島第1原発の処理水放出に反対する習近平政権の対抗措置とみられる。

 

中国政府の影響下にある香港でも同様の検査強化で通関が滞っているという。ともに日本産の主要輸出先で、日本が被る損害の大きさが懸念されている。

 

廃炉・汚染水・処理水対策福島評議会に出席し、IAEAの取り組みについて話すグロッシ事務局長(左)=7月5日午前、福島県いわき市(共同)

 

納得できないのはこの措置に科学的根拠がないことだ。松野博一官房長官は「日本からの食品輸入規制の緩和、撤廃に向けた国際的な動きに逆行する」と語った。政府は科学的根拠に基づく議論で早期撤廃を求めていく考えだ。

 

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世界貿易機関(WTO)などの場で厳しく断罪したり、先進7カ国(G7)諸国と連携して対抗策を講じたりすることも検討すべきである。中国の経済的威圧には毅然(きぜん)と対処しなくてはならない。

 

報道陣に公開された、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出設備。右は処理水と海水が混ざり合う直径2・2メートルの配管=6月26日午後(共同)

 

中国の税関当局は従来、日本の水産物に抜き取りの放射線検査を行ってきたが、全量検査に切り替えたようだ。その結果、通関に2週間から1カ月を要し、刺し身用などの鮮度を保てなくなった。

 

もとより処理水放出前に検査を強める合理的理由はない。中国外務省は、健康と海洋環境を守るため「計画に反対し、関連措置を講じることには確かな根拠がある」とするが、全くの詭弁(きべん)である。

 

計画は国際的な安全基準に合致し、国際機関の検証でも問題がないと結論づけられた。安全性批判は悪意のあるプロパガンダだ。

 

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中国浙江省の秦山原発。2011年に出力を倍増する改修工事が行われ、第3原発では福島第1原発の6.5倍となる年間143兆ベクレルの放射性物質を含む処理水を排出している

 

中国政府は処理水を「核汚染水」などと表現してデマや風評をあおってきた。これまで日本側が科学的根拠に基づく議論を求めても耳を貸さなかったのは、自らの主張が荒唐無稽だと暗に認めていることにほかならない。

 

中国の主眼はむしろ、台湾情勢や経済安全保障などを巡る日本の厳しい対中姿勢を牽制(けんせい)することにあるのではないか。さらに日本政府の対応も瀬踏みしているのだろう。そこを認識しておきたい。

 

通関を遅らせて貿易を止める経済的威圧は中国の常套(じょうとう)手段だ。2010年、事実上のレアアースの対日禁輸を行った際もそうで、こうした振る舞いをやめようとはしない。中国は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加盟を申請している。だが、それを認めるべきでないことは、今回の措置からも明確になったはずである。

 

 

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2023年7月25日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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