【主張】大阪・関西万博 国を挙げ取り組むときだ
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2025年大阪・関西万博のパビリオン建設準備が大幅に遅れている。
開幕まで2年を切り、残された時間は少ない。万博は国家的イベントだ。オールジャパンで英知を集め「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマにふさわしい万博の実現に国を挙げて取り組むべきである。
危ぶまれるのは海外勢のパビリオン建設だ。参加表明した153カ国・地域のうち約50カ国は自前で建設を予定するが、国内ゼネコンと工事契約を締結した国はない。許可申請の事前手続き1件が行われたのみだ。
契約の遅れは建設準備、ひいては開幕の遅れに直結しかねない。動きの鈍い国々への働きかけを強めていく必要がある。
背景には、前回のドバイ万博が新型コロナウイルスの影響で1年延期され、今回の参加国の準備期間が短くなった影響もある。ロシアのウクライナ侵攻などに伴うサプライチェーン(供給網)分断や、資材価格の高騰も追い打ちをかけた。
政府は8月2日、受注をためらう建設業者向けの万博貿易保険を創設したと発表した。建設会社が代金を回収できなくなるリスクを軽減することで、工事契約を後押しするためだ。受け入れ側の環境整備も欠かせない。
時間外労働に上限を定める改正労働基準法の施行に伴い、来年度から建設業で残業規制が強化される「2024年問題」で人手不足にも拍車がかかる。ただ、労基法には上限規制を外せる例外規定がある。働く人の健康や体調管理に留意しながらの柔軟な対応が求められる。
主催者の政府と日本国際博覧会協会、大阪府市は連携をさらに強化し、官民一体で新しい会場建設のあり方や働き方を編み出す機会としたい。
1970年の大阪万博は最先端技術の実証の場だった。「未来社会の実験場」と位置付けられる2025年万博では、工期が短く安価な3次元(3D)プリンター製の建物など、技術革新の進展も期待される。
当初、約1250億円だった会場建設費は3年前に約1850億円に増額された。今後、さらなる上振れも危惧される。政府と大阪府市、財界が同等に負担するため、3分の2は公費である。国民の理解を得るためにも知恵を結集し、魅力的な万博を作り上げていきたい。
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2023年8月4日付産経新聞【主張】を転載しています
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