【Tokyo Outlook】覚醒するインドの行方
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Japan Must Ask if India Is Really a Trusted Partner
(日本は、インドが真に信頼できるパートナーなのか、問わなければならない)
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インド外務省が8月中旬、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を前に、サミット参加国のメディアを対象にしたインド視察ツアーを実施した。英語ニュース・オピニオンサイト、JAPAN Forward(JF)は、在日インド大使館から招待され、首都を含む3都市を12日間で巡るインド政府主催のツアーに参加した。
15カ国から27人が参加。日本からは、筆者(内藤)を含む2人が加わったが、米国と中国の2大国からの参加者はなかった。
ツアーには、インド外務省の若手外交官3人が調整役として同行。高級ホテルに滞在して常にバスで移動した。地方では、警察車両が先導し、救急車までついてきた。食事からペットボトルの水、さらには、「インド独立の父」ガンジーの黄金色の像を含むお土産の数々まで準備されていたのには驚いた。
8月15日の独立記念式典にも参列した。モディ首相が、炎天下で約90分にわたり演説し、インドがグローバルサウスと呼ばれる新興・途上国のリーダーとなったこと、さらに、これにとどまらず、独立から100年となる2047年には先進国入りを果たすと熱く語るのを聞いた。参列者が首相の演説に歓声を上げるのを見ていると、日本列島改造計画を実行した日本の元首相、田中角栄(1918~93年)氏ら戦後日本を牽引(けんいん)してきた指導者たちの姿とダブってみえた。
今回、G20のシェルパやジャイシャンカル外相を含め、話を聞いた幹部はみなインドの未来に疑いを持っていなかった。
もう一つの驚きは、インドのデジタル、および情報技術の飛躍的な前進だ。日本でようやく進み始めたマイナンバー制度は、インドではすでに導入され、ものすごいスピードで進化していた。登録したインド国民は、買い物、サービスの支払いや決済、送金、補助金、奨学金、ワクチン接種券の受け取りなどすべて携帯電話で手数料なしでできるようになったという。
システムを構築したインド決済公社(NPCI)の担当者は「高コストの現金取引から一気に低コストでスピードあるシステムになったことで、インフラが整備されていない農村部にまで資金移動を可能にし、多くの問題を解決している」と述べ、日本でも関心を示している人たちはいることを明らかにした。
ただ、すでに別のシステムが稼働している先進国に導入する動きはまだないという。「QRコードを発明した日本の開発者が無料で利用を開放しなかったら、この決済システムはできなかった」と持ち上げた。それでも、その創造力には正直、舌を巻いた。
初の無人月探査機を月に軟着陸させる宇宙技術があるのに、インフラはお世辞にも良いとはいえない。
アフリカで橋などの大型インフラを建設する建築大手を訪問した際には、「日本は、政府開発援助(ODA)を使ってアフリカに病院を建て、欧米製に比較して廉価で高性能な日本製の医療機器を納入すれば絶対にうまくいく。日本政府に口をきいてくれ」と、“商談”まで持ち掛けられた。インドでは、何でもありそうだ。
上の英文(日本語訳)は、JFの外交問題担当記者、ダンカン・バートレット氏が書いた記事の見出しである。G20サミットで対ロシア批判を避けたインドは、裏で中露とつながっているのではないか-。そんな疑念を代弁した記事だ。
中国を抜いて世界最大の人口14億を抱える平均年齢24歳の大国インドが、世界第2位の経済大国となるのも時間の問題だろう。インドは真に信頼できる日本のパートナーとなるのか-。JFは、覚醒するインドの行方を注視していきたい。
筆者:内藤泰朗(JAPAN Forward編集長)
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2023年9月18日付産経新聞【JAPAN Forward 日本を発信】を転載しています
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