中国の「失われた20年」に現実味 G20サミット、世界経済下方リスクへの認識共有
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インドの首都ニューデリーで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)では、中国の不動産問題などを念頭に世界経済の下方リスクについても認識を共有。取りまとめた首脳宣言では各国が協調して取り組む重要性を訴えた。ただ、ロシアによるウクライナ侵攻や米中対立など、世界は依然として分断が続いているのが実態だ。
「世界経済の成長と安定に対する向かい風は続いている」。首脳宣言では、世界が直面する経済の下方リスクについてこう総括した。
特に足元で懸念されているのがこれまで世界経済の牽引(けんいん)役だった中国の減速だ。8月には巨額の負債を抱える中国不動産大手、中国恒大集団が米国で破産法を申請。碧桂園など他の大手不動産会社でも経営難が表面化している。
大和総研の斎藤尚登経済調査部長は、比較的堅実な経営をしていた碧桂園まで経営難に陥ったのは、中国の不動産に対し投資家が敬遠し始めている証左で、「明らかに局面が悪化している」と指摘する。
不動産問題だけでなく、中国は過剰債務に加え、20%を超える若年層の失業率や日本を上回る急速な少子高齢化といった問題も抱えている。
もっとも不動産問題をきっかけに金融機関が多額の不良債権を抱えるなど、金融危機が広がる状況にはないが、斎藤氏は「中国が日本のように『失われた20年』と呼ばれる状況に陥る可能性は高い」と話す。
ニッセイ基礎研究所の高山武士主任研究員は「インフレも世界経済にとっては引き続きリスク要因だ」と指摘する。過剰な景気を冷まそうとする欧米の利上げの流れは続いており、世界経済が一気に冷え込むリスクはなお残るからだ。
気候変動による世界的な自然災害の多発も、食料価格などに更なる悪影響を与えかねない状況だ。食料問題がより深刻とされる途上国の中には、債務問題を抱える国も多い。
危機は突然やってくる。グローバル化で密接になった世界経済は、危機対応でも協調が不可欠だ。G20の存在意義もここにある。
今回、首脳宣言が出せないという最悪の事態は回避した。ただ、ロシアや中国など西側諸国と異なる価値を持つ国々も参加するG20が、実際に危機が生じた際に結束できる保証はない。首脳宣言の内容を額面通りには受け止められない現実もある。
筆者:蕎麦谷里志(産経新聞)
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