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「日本の夜」はつまらない? 「せんべろ」「毒キノコ」で訪日客にアピール

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インバウンド(訪日外国人客)が急回復するなか、夜の経済活動「ナイトタイムエコノミー」が注目を集めている。新型コロナウイルス禍では「夜の街」が悪者扱いされ、飲食店などは時短営業を余儀なくされたが、コロナ後はインバウンドの個人消費を押し上げる起爆剤と期待されている。訪日旅行の中での優先度はまだあまり高くないものの、コロナ禍を経てレジャーや観光に対する価値観が変わって夜遊びのコンテンツは広がりをみせており、今後の伸びが期待されている。

 

 

日本旅行での不満上位

 

ナイトタイムエコノミーとは日没から日の出までの経済活動を指し、日本では国土交通省が午後6時から翌日午前6時までと定めている。ショーやダンスクラブ、パブなど、欧米では仕事を終えた後や週末など私的な夜の時間を楽しめるさまざまなコンテンツがあるが、観光立国を目指す日本ではこれまで、インバウンドを呼び込むうえで課題と指摘されてきた分野だ。

 

日本政策投資銀行と日本交通公社が令和3年10月に実施したインバウンドの意向調査によると、訪日旅行で体験したいことの上位に自然や風景の見物、伝統的な日本料理などが挙がる一方、ナイトライフは35位中29位と順位の低さが目立った。コロナ禍前の元年調査でも、訪日旅行での不満な内容としてナイトライフが40位中6位に挙がるなど、「インバウンドにとって日本で『夜ならこれ』という楽しみが思い浮かばないことが浮き彫りになっている」(大手旅行会社)。

 

一方で夜間の消費を伸ばすことができればさらなる訪日市場の拡大が期待できる。コロナ禍前はインバウンドの旅行消費額全体が伸びる半面、1人当たりの旅行支出は頭打ちの懸念が出ていた。政府は現在、1人当たりの支出を元年の15万8531円から7年までに20万円まで引き上げる目標を掲げている。

 

 

光る毒キノコを満喫

 

すでに大阪では夜間の観光需要を取り込むための取り組みが始まっている。

 

JTBや大阪観光局、地元商店会などでつくる「道頓堀ナイトカルチャー創造協議会」は、酒を飲みながら大阪・道頓堀で音楽やダンスを楽しめるナイトショーの定期公演を7月に始め、8月末までで延べ約900人を集客した。和楽器を奏で、着物風の衣装をまとった女性らがダンスをするほか、客も舞台に上がって楽器に触れたり演者と盛り上がったりできる参加型のショーだ。担当者は「日本文化も楽しめる演出で、外国人だけでなく日本の若者にも見てほしい」と話す。

 

また宿泊場所近くの飲食店を使ってもらう活動として、大阪・曽根崎の「ホテルエルシエント大阪」は複数の飲食店と組み、お酒とつまみを合わせて千円程度で提供する「せんべろ」メニューの販売を始めた。ホテルのカードキーを提示すればさらに割引の特典を受けられ、夜のはしご酒を促す。曽根崎は「せんべろの聖地」と呼ばれ、短時間で手軽にお酒が楽しめるスポットで、「昔懐かしい昭和レトロな空間がただよう街の個性をウリに、外国人客を呼び込みたい」(広報担当者)としている。

 

大勢の訪日客らでにぎわう大阪・ミナミの道頓堀周辺=7月16日、大阪市中央区(恵守乾撮影)

 

コロナ禍に需要が高まったアウトドアや自然を楽しむ観光の人気は現在も続いており、夜間まで活動時間を広げる動きが出ている。

 

「星野リゾート 奥入瀬(おいらせ)渓流ホテル」(青森県十和田市)では、一風変わった夜の「毒キノコ」をめでるイベントを展開する。夏の終わりから秋にかけて群生するツキヨタケは、昼は何の変哲もないキノコだが夜になると怪しく光る。素人では光る場所を見つけるのが難しいツキヨタケに目を付け、渓流を熟知したスタッフが生態の解説も交えてガイドする。参加者の多くが女性客で「かわいらしさにひかれる愛好家もいる」という。

 

「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」では夜に怪しい光を話すツキヨタケを観賞するアクティビティーが人気を呼んでいる=2021年9月7日、青森県十和田市(同ホテル提供)

 

福井県大野市の南六呂師エリアでは、約300の防犯灯などを上に光が漏れないタイプに替え、過剰な光が自然に悪影響をもたらす「光害」を抑える取り組みが実を結び、星空の世界遺産といわれる国際認証制度「星空保護区」の国内4例目に認定された。天の川が肉眼で見える美しい星空は、都市近くにありながら優れた夜空の保護などを行う場所が対象の「アーバン・ナイトスカイプレイス」部門にもアジアで初めて選ばれた。ハンモックから星空を見上げる体験イベントが人気で「周りの光が気にならない分、星の美しさを感じられる」(大野市の担当者)という。

 

南六呂師地区の星空保護区認定の連絡を受け、福井県大野市役所で開かれたセレモニー=8月21日(同市提供)

 

観光公害の課題も

 

これら夜の自然を楽しむ観光はまだインバウンドになじみがなく、今後の拡大に期待が高まっている。

 

ナイトタイムエコノミー推進協議会の齋藤貴弘代表理事は、コロナ禍で行動が制限されていたからこそリアル(現実空間)の重要性が高まり、観光・レジャーにおいては「行かなければできない体験へのニーズが高まっている」と話す。外国人受けを狙った写真映えだけの〝エセ日本〟ではなく、「求められているのは文化や歴史に裏打ちされた物語も含めた本物の体験。そのバリエーションの多さが日本の武器となる」と強調する。

 

ただ、忘れてはならないのがオーバーツーリズム(観光公害)の課題だ。例えばオランダの首都アムステルダムではコロナ禍前に中心部が観光客向けの店だらけになり、夜間は麻薬取引なども増え旅行者の迷惑行為が問題視されていたといい、齋藤氏は「街づくりをどうするか。夜間経済の新たな形について行政も観光事業者と一緒に議論すべきだ」と指摘している。

 

筆者:田村慶子(産経新聞)

 

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