fbpx
Connect with us

【主張】米国版「はやぶさ」 初代の偉業をつなげたい

Published

on

米探査機オシリス・レックスのイメージ(NASA提供・共同)

~~

 

米航空宇宙局(NASA)の探査機オシリス・レックスが小惑星ベンヌで採取した岩石試料の入ったカプセルが回収された。小惑星からの試料回収は、日本の「はやぶさ」「はやぶさ2」に続いて3例目である。

 

米ユタ州の米軍施設に設置したクリーンルームで、探査機オシリス・レックスのカプセルを開ける技術者ら=9月24日(NASA提供)

 

深刻なトラブルをいくつも乗り越え、2010年に小惑星「イトカワ」からの帰還と試料回収を成し遂げた「初代はやぶさ」の偉業が、「米国版はやぶさ」の成功の礎になった。米国チームは初代の取り組みを丹念に調べ、計画立案などの参考にしたという。

 

日本の宇宙技術と経験が、宇宙大国である米国から必要とされ、敬意を持たれたことには、大きな意義がある。宇宙に限らず、科学技術で幅広く人類に貢献し、国際社会から必要とされ尊敬される国であることは、日本の安全保障の礎となる。

 

Advertisement

小惑星リュウグウ上空の「はやぶさ2」の想像図(池下章裕氏提供)

 

初代はやぶさに続く小惑星探査では、日本のはやぶさ2と米国のオシリス・レックスの計画がほぼ同時に始動し、日米は情報交換と議論を重ねて計画を練り上げた。はやぶさ2とオシリス・レックスの成功は、日米の競争と協調の成果でもある。

 

ユタ州の砂漠に着地した探査機オシリス・レックスのカプセルを梱包する回収チーム=9月24日(NASA提供)

 

小惑星の岩石試料からは、太陽系の成り立ちや、地球生命の起源に迫る手がかりが得られる可能性がある。小惑星探査は経済成長に直結する分野ではないが、初代はやぶさの偉業とはやぶさ2の成功は、日本の存在感を高めた。経済波及効果も大事ではあるが、科学技術施策の基軸には人類と国際社会への貢献を据えるべきであろう。

 

初代はやぶさの偉業は映画化もされ、子供たちが宇宙や科学に関心を寄せる契機になった。どんなに深刻な困難に直面しても決してあきらめず、「できることはやり尽くす」という姿勢を貫いたはやぶさチームに多くの国民が勇気づけられた。

 

2011年11月22日、映画「はやぶさ 遙かなる帰還」のイベントに、撮影で使用した原寸大のはやぶさと、実際のはやぶさに携わった技術者174人とともに登場した渡辺謙(前列中央)。初代はやぶさの偉業をめぐり、このほか2本の映画が制作された(産経新聞)

あの感動から13年が過ぎた。日本の科学技術力は深刻な低落が続き、宇宙分野もロケット打ち上げ失敗などで沈滞ムードが漂う。初代はやぶさほどのドラマは起きなくても、各国から必要とされる技術を確立することで日本の存在感を高め、沈滞ムード打開の糸口にできる。

 

Advertisement

小型月着陸実証機「スリム」(JAXA提供)

 

9月に打ち上げられた実証機「スリム(SLIM)」が挑む月面へのピンポイント着陸に、その期待がかかる。できることをやり尽くして、初代はやぶさの偉業をつなげたい。

 

 

2023年9月28日付産経新聞【主張】を転載しています

 

この記事の英文記事を読む

 

Advertisement

 

Continue Reading
Click to comment

You must be logged in to post a comment Login

Leave a Reply