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特訓か休養か?選手交代のタイミングは? スポーツ指導者の判断をデータで支援「xG-1」

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チームプレーのスポーツ競技で選手一人一人の動きをリアルタイムで分析するテクノロジーとセンシングユニット「xG-1」に関する論文を、クロスセンシング社の山田貴之氏、政木英一氏、松林豊氏、関西大学の田中成典教授、鳴尾丈司特別任命教授、山本雄平助教、法政大学の今井龍一教授、大阪経済大学の中村健二教授、大阪産業大学の姜文渊(きょう・ぶんえん)准教授、元関西大学の田中ちひろ氏の研究チームが論文を発表した。この研究に関する論文はデジタル領域を中心に学術論文を広く掲載する電子ジャーナル「Journal of Digital Life」(ジャーナル・オブ・デジタル・ライフ)で公開されている。

 

 

求められる“データドリブン指導”

 

ラグビーW杯フランス大会に出場した日本は8日、アルゼンチンに敗れて1次リーグ突破を逃したが、最後まで諦めないプレーで見る人を感動させた。日本ラグビーフットボール協会の土田雅人会長は同日、選手らの健闘をたたえて、W杯で「頂点に立つ」ことを目指して挑戦を続けるとするコメントを協会公式サイトで発表。11日には高校生・大学生を含めた選手の発掘と育成を視野に入れて次期ヘッドコーチを選ぶ方針を明らかにした。

 

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帰国し、会見するラグビー日本代表の姫野和樹主将(左)と流大副主将=千葉県成田市(佐藤徳昭撮影)

 

ラグビーに限らずスポーツの指導者には、主観的な経験に基づく従来の指導法ではなく、客観的なデータに基づいて評価と決断をする「データドリブン」方式が求められている。そのため、選手にセンサー付きのウェアラブル機器を装着させて、試合中の位置や行動を計測することで指導に役立てる取り組みが海外を中心に行われてきた。

 

しかし、選手の状態を細かく把握・解析するための機能がないことや、各種機能のカスタマイズ性が低いことなどが普及の足かせになっていた。研究チームが調査をしたところ「選手の交代のタイミングを示すダッシュボード」「運動強度の比較機能」などの機能が求められており、従来のシステムが指導者らのニーズを満たせていないことが明らかになった。そこで研究チームは、試合中に選手の状態を把握したいニーズと、練習における成長の度合いやコンディションを把握したいニーズに応えることを目指して、選手の動きを詳細に調べるセンシングユニットと、センシングユニットから取得したデータを分析するソフトウェアの開発に取り組んだ。

 

 

速度の違い細かく検出

 

このプロジェクトで研究チームはセンサーを搭載した小型機器「xG-1」を開発した。サイズは88mm×44mm×19mmで、重さは64g。ユニホームの下に専用のベストを着用して、背中側のポケットに「xG-1」を設置する。

 

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研究チームが開発した「xG-1」

 

米国のGPSや日本の準天頂衛星「みちびき」に対応した測位衛星システム(GNSS)で選手の位置情報を読み取る仕組みだが、カーナビやスマートフォンのように受信機が1つの単独測位では誤差が大きくなってしまう。そのため、複数の受信機を用いて位置情報のずれを補正する相対測位(リアルタイムキネマティック測位)を採用して精度を高めた。その結果、静止時は数cm、走っている状態でも数十cmの誤差にとどまったという。

 

機器は前後・上下・左右の傾きを数値化して選手の姿勢を知らせるだけでなく、加速度センサーなどで「スプリント(時速24km以上)」「ハイスピード(時速18km以上)」で移動した距離や回数を細かく計測する。心拍数や、相手選手とぶつかるなどして受けた衝撃の強さなど、映像から計測することが難しい情報も取得できる。センサーの値を総合的に解析して転倒やジャンプなども分析可能だ。

 

また、ライセンス面ではサッカーのFIFA EPTSとラグビーのWorld Rugby認証を取得しているので、これらのスポーツの公式戦に「xG-1」を装着して出場できるという。

 

 

試合中のデータから選手交代の判断も

 

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研究チームは、「xG-1」で取得した各種のデータを可視化するソフトウェアも開発した。指導者らの要望を受けてダッシュボード画面の機能を充実させたのが特徴で、位置情報などから選手のポジショニングなどを確認する「フィールド機能」、選手ごとの走行距離や心拍数をグラフ化する「パネル機能」、1週間、4週間というように一定期間中の運動を分析する「運動強度解析機能」、現在のチームの運動強度を過去のデータやトッププロなどと比較する「運動強度比較機能」を備えているという。

 

ダッシュボード画面のパネル機能

 

これら4機能は、データドリブンの見地から監督やコーチの指導をサポートする。例えば試合中、サッカーチームの監督がパネル機能を使い、特定の選手の心拍や走行距離のデータが事前に決めた数値を超えたタイミングで選手交代を検討するという活用法が考えられる。運動強度解析機能を使うと、けがのリスクの指標であるACWRを普段の練習量に基づいて分析できるので、大事な試合に向けて特訓をさせるか、休養をとらせるかといった判断がしやすくなる。

 

ダッシュボード画面の運動強度解析機能。ACWRの数値が黒の実線の範囲であれば、けがのリスクが低減されると考えられる

 

また、フィールドで選手らがどのように動いたかをヒートマップで表してExcelやPDFの形式でレポートを出力する「ステーション画面」もあるという。

 

 

選手の発掘と育成を後押し

 

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研究チームは50以上のスポーツチームに同システムを提供。すると、プロ・大学・高校の年代で活用法に違いが見られた。

 

サッカーJリーグ所属のトップチームでは選手が加速、減速する場所を割り出すなどして試合結果の振り返りに使っていた。また、メディカルコーチが、けがからの復帰を目指す選手のために、運動時の身体のデータをリハビリテーションに生かすという使い方もあった。

 

大学ではトレーニングの質をチェックして練習内容を変えており、高校生の年代では自身の立ち位置を把握するなどの目的で使われていた。同システムは、提供を受けた「すべてのチーム」から高く評価されたという。

 

研究チームはこれらの結果から、「xG-1」は選手一人一人の動きを高い精度で計測して全体を分析できるシステムだと強調。「プロのスポーツ指導者ではない小中高の部活動の顧問の先生に、戦術分析や練習メニューの立案支援などのサービス提供が可能となる」と述べて、若い世代の選手の発掘と育成に役立つ可能性を示唆している。

 

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筆者:野間健利(産経デジタル)

 

 

2023年10月18日産経デジタルiza【From Digital Life】を転載しています

 

この記事の英文記事を読む

 

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