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ものの見方変えるトイレ清掃員の日常 映画「PERFECT DAYS」ヴィム・ヴェンダース監督

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ヴィム・ヴェンダース監督(岩崎叶汰撮影)

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主演の役所広司(67)がカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した「PERFECT DAYS」が、いよいよ日本で公開される。監督は数々のロードムービーの傑作を手掛けてきたドイツの名匠、ヴィム・ヴェンダース(78)。親日家で小津安二郎監督を敬愛していることでも知られるヴェンダース監督が、作品について語った。

 

本作はもともと、安藤忠雄や隈研吾といった世界的建築家やクリエーターがデザインした公共トイレを東京都渋谷区内に設置する「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの一環。当初は公共トイレに関する短編のドキュメンタリーを何本か作る予定だった。

 

 

アートな公共トイレ

 

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ヴェンダース監督は昨年5月、シナリオハンティングのため11年ぶりに来日。実際に安藤らがデザインした公共トイレを見て、まったく違うインスピレーションを受けた。「もっと大きな絵がそこにあるのではないか。東京という街を捉えるようなものが作れるはずだ」。そして一編の長編映画として製作された。

 

安藤忠雄氏が手掛けた神宮通公園トイレ(日本財団提供、永禮賢撮影)

 

本作で描かれているのは、古アパートで一人暮らしをしながら、トイレの清掃員として働く男の何げない日常。朝は、近所の道を掃く竹ぼうきの音で目覚める。仕事を終えると、いつもの居酒屋で一杯やった後、家に戻り、布団の中で古本を読み、眠りにつく。毎日、この繰り返しだ。

 

主人公の平山(役所)は経済的な豊かさにも家族にも恵まれていないが、日々の生活に満足しているようにみえる。モノに囲まれ、家族・人間関係に疲れ、常に〝断捨離〟を必要としている現代人には、平山のシンプルな生き方がうらやましくも見える。

 

映画「PERFECT DAYS」© 2023 MASTER MIND Ltd.

 

「主人公の人物造形が、作品のいちばん重要なポイントだった」という。クリエーティブディレクターの高崎卓馬(54)とともに脚本を手掛け、「高崎さんと、理想的な平山とはどんな人間だろうと考えた。簡素な生活を送っているけれど幸せな人。いまをしっかり生きている人。何か人のためになることを誇らしく思っている人のイメージを浮かべた」。

 

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ヴィム・ヴェンダース監督(岩崎叶汰撮影)

 

ちなみに平山の名は、「東京物語」など小津監督作品で笠智衆が演じた役名が由来だ。キャスティングは初期から役所に決まっていた。「Shall we ダンス?」など役所の出演映画は10本以上見ており、「どんな役もこなせる、いい役者」という印象を持った。

 

「役所さんは、木漏れ日や木の根元にある新芽に気づくような平山を、そのやさしいまなざしと目の表情で演じてくれた。恐らく観客は平山の見方に共感するだろう。この作品を通して、最終的に皆さんの、ものの見方が変わってくれたらいいなと思っている」

 

映画「PERFECT DAYS」© 2023 MASTER MIND Ltd.

 

筆者:水沼啓子(産経新聞)

 

 

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12月22日から全国公開。田中泯、柄本時生、石川さゆり、三浦友和らが共演。2時間4分。

 

ヴィム・ヴェンダース監督(岩崎叶汰撮影)

■ヴィム・ヴェンダース 1945年、独デュッセルドルフ生まれ。「ことの次第」でベネチア国際映画祭で最高賞受賞。「パリ、テキサス」でカンヌ国際映画祭最高賞を受賞し、「ベルリン・天使の詩」は同映画祭監督賞を受賞。昨年、高松宮殿下記念世界文化賞(演劇・映像部門)を受賞した。

 

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