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2024米大統領選とその影響力

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今秋の米大統領選挙は世界中が注目する。ウクライナもガザも中国も北朝鮮も当然大きな影響を受ける。

 

2020年の前回大統領選挙も民主共和両党にとって天下分け目の決戦だった。バイデン氏の得票数は8100万票、トランプ氏は7400万票だった。これまで米国史上最大の得票数がオバマ氏の6800万票だったからいかに両陣営が必死の票の掘り起こしをしたか分かる。

 

この時バイデン氏は700万票以上多く得票したが実は大接戦だった。米国大統領選挙は各州に人口も勘案して上下院議員同数の計538人の選挙人が置かれている。カリフォルニア55人、テキサス38人、フロリダ29人、マサチューセッツ11人、ワイオミング3人という具合である。538人の過半数の計270人とった方が勝ちである。ほとんどの州では一票でも多くとった候補が選挙人を総獲りできるウィナーテイクオールという決まりにしている。

 

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よく中西部のラストベルト(錆びの地帯)という鉄鋼自動車などの生産州約10州がどちらの党にも行き得るスイングステートとして鍵を握ると言われる。しかし2020年の選挙で鍵を握ったのは次の4州でうち中西部はウィスコンシン1州しかない。4州の結果は以下である。

 

  • ジョージア(選挙人16人)247万票 対 246万票
  • アリゾナ(同11人)167万票 対 166万票
  • ウィスコンシン(同10人)163万票 対 161万票
  • ネバダ(同6人) 70万票 対 67万票

 

この4州の結果が逆だったとすると選挙人がバイデン氏263人、トランプ氏275人でトランプ氏勝利だった。こんな僅差だったからこそトランプ氏が負けていないとしつこく言いつのっているのである。この4州の合計得票数でバイデン氏は8万票弱しか差をつけておらず、この8万票の人が棄権していればトランプが勝っていた算数になる。1億5千万人が投票したうちの8万人というのは0.05%である。このような数字の予想をできるものだろうか。

 

2020年米大統領選で選挙活動を行うトランプ氏(左)とバイデン氏

 

おそらく2024年についても同様に予想困難となるだろう。メディアで予想する識者のうちの多くは全体の動向、風潮をオウム返ししているだけで各州ごとの細かい数字を分析把握しているわけではないだろう。

 

今のところ両党の中で圧倒的にリードしているバイデン、トランプ両氏の激突になる可能性は高い。しかし決まったわけではない。二人とも高齢であり、トランプ氏は訴追案件を抱え、反乱に関係したことが憲法上適格か争われている。また第三党のケネディ氏が民主党票をどの程度喰うかも注目される。

 

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トランプ氏がいくつもの案件で訴追されても共和党支持者の中で圧倒的に支持を受けているのはなぜか。背景を見る必要がある米国の不法移民の数は1990年には350万人だったが2010年には3倍増で1000万人を越えた。米国の製造就業労働人口は1998年1800万人から2011年に1100万人に減った。他方米国の最富裕の0.1%が持つ米国の富に占める割合は1990年に1.8%だったが2020年は18%になっている。米国の労働者は今まで騙されてバカを見てきた、これからは米国企業に外国に投資させず、外国企業に対米資させて米国労働者のための仕事をつくる、オレはお前らにもう損させないぞというトランプ氏のメッセージが刺さっているのある。

 

トランプ氏は前任のオバマ氏の政策をことごとく否定した。環境ではパリ協定を脱退し、国連人権理も脱退し、小型核兵器開発を進めた。また民主主義は各国それぞれが判断すればいいとし、同盟国はただ乗りしていると強調した。プーチン、金正恩などの指導者との個人的関係を重視した。

 

バイデン米大統領=12月12日、ホワイトハウス(ロイター)

 

バイデン氏はすべてをまたひっくり返した。パリ協定、国連人権理にただちに復帰し、小型核兵器開発は停止した。同盟国が米外交最大の産であると重視し、民主主義国家のサミットを主導した。プーチンとは厳しい関係にあり、金正恩には会ってすらいない。ほとんど真逆である。

 

ただし要注意なのは、バイデン政権も自らは認めないだろうがトランプ氏の影響は受けていることである。一つはアメリカ・ファーストである。ブリンケン国務長官就任直後の外交演説は衝撃的だった。彼は我々の自由貿易はマイナスの影響を十分に考えなかった点誤りだった、これからは米国労働者のために戦うと明言した。バイデン氏の2023年の年頭教書もバイアメリカ法は1933年から存在するが自分の前任者たちはきちんと運用してこなかった、これからは米国政府のカネでつくるインフラはアメリカの企業のみが受注すると断言した。WTO政府調達協定なんのそのである。

 

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もう一つは対中強硬姿勢である。制裁は継続されたし、個人的関係でもオバマ夫人が令嬢二人を連れて習近平夫人の賓客として訪中したようなことは今や夢のまた夢である。

 

ホワイトハウス(ウィキメディアコモンズから)

 

トランプ氏が復帰すればしかし第一期よりさらに内向きになると見られている。不法移民強制送還、海外駐留米軍数千人を引き揚げメキシコとの国境警備にあたらせる、米石油ガス産業の規制緩和、外国製品への一律関税引き上げ、中国製品に他国製品と同じ関税を適用するとのWTO義務を遵守しないなど次々述べている。もちろん実際に就任した場合このすべてが実施されないことは、先例に鑑みてもありうるが、相当のことは覚悟しておく必要がある。

 

翻って日本はどう対応すべきか。簡単である。選挙当日まで何も言わず、結果が出たら「おめでとう。すばらしい。(これからも)(また)一緒にやりましょう」と言う。()内が違うだけである。決めるのは米国民である。ほかに何が言えようか。

 

筆者:藤崎一郎(元駐米日本大使)

 

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