【主張】警視庁創設150年 治安環境に応じ進化せよ
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首都の治安を担う警視庁が明治7年の創設から150年を迎えた。昭和51年に『ニッポンの警察』を著述し、日本警察の類(たぐ)い稀(まれ)な清潔さと国民との信頼関係を絶賛した米政治学者のデビッド・ベイリー氏は「警察は社会を映す鏡」と指摘したが、現在の警視庁は極めて現代的な課題に直面している。
第一に、先鋭化する犯罪の対応だ。無差別大量殺傷、特殊詐欺、サイバー犯罪が3大難犯罪だが、捜査に要する技術は難易度が高いのに、与えられる法的武器は時代に即していない。
生活、産業のインフラとなったネットに隠れて跋扈(ばっこ)するこれらの犯罪は、現在の法制度では対策が限定される。壁となる匿名性を突破するには、高度な通信傍受や能動的防御などが対抗策になり得るが、現状は法的に無理だ。どう対処するか。
裏腹だが、SNSやAIをどう警察活動に取り入れるか。過去の難課題だったひったくりや車上狙いなど街頭犯罪は、防犯カメラ設置で激減した。鍵を用いず開錠するピッキングによる侵入盗は、鍵の機能強化によって減った。民間との不断の技術協力は将来も治安の向上に寄与するはずだ。ネットの捜査への積極応用を考えてほしい。
人手不足は警察も例外でない。人材と技術をどう継承するか。東京において交番網はどこまで維持すべきものなのか。
首都圏はかつてなく大災害の危険をはらむ。災害時の警察の機能とは何か。首都警察として「そのとき」への備えと啓蒙(けいもう)を万全にしておく必要がある。
社会の多様化は進む。警察が守るべき秩序も変わり得る。ストーカー問題は痛ましい事件が続き、動かぬ警察が批判された。虐待から子供を救えず、児童相談所との連携強化や積極介入を求める声が強い。共にかつては民事問題で警察関与は拒まれたが、今は強く関与を望まれる。社会も治安環境も変わる。警視庁に求められるのはそこに対応できる「進化」の力だ。
創設100年(昭和49年)からの50年は冷戦下の警備公安活動と刑事事件捜査の近代化を軸に、内外組織犯罪との対決の時代だった。今後50年はまた違う風景となろう。不祥事で組織が揺らぐこともある。その余波が捜査の自由度をそぐことが怖い。摘発の力こそ第一義であることは忘れてなるまい。
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2024年1月28日付産経新聞【主張】を転載しています
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