【主張】施政方針演説 安全保障をもっと訴えよ
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岸田文雄首相は国会で施政方針演説を行い自民党派閥のパーティー収入不記載事件を受け、政治資金規正法改正などの改革を行う考えを示した。
首相が語った「政治の安定なくして政策の推進はない。国民の信頼なくして政治の安定はない」との認識は、その通りである。政治資金の透明性やコンプライアンス(法令順守)の徹底などを進めるとも述べた。信頼回復が急がれる。
そうは言っても「政治とカネ」問題に汲々(きゅうきゅう)とするあまり、政治姿勢が「内向き」となり、外交・安全保障などを疎(おろそ)かにすることは避けねばならない。今年の日本は先進7カ国(G7)の議長国ではないが、国際社会で担うべき役割は大きい。
台湾併吞(へいどん)を目指す中国は覇権主義的な動きを強めている。ロシアによるウクライナ侵略は長期化し、北朝鮮はロシアと協力関係を強めている。その一方で、欧米諸国にはウクライナへの支援疲れが広がっている。
首相は「世界の安定と繁栄に向け国際社会をリードする」と述べたが、物足りない。昨年1月の演説では「覚悟をもって、新たな時代にふさわしい国際秩序を創り上げていかねばならない」と強調していた。その具体策こそ今年語るべきだった。
上川陽子外相は外交演説で「台湾海峡の平和と安定」の重要性を指摘した。このような問題意識は首相にも触れてほしかった。
首相は厳しい安全保障環境に対する認識をより明確に示し、抑止力と対処力を強化する必要性や、防衛力に裏付けられた外交の意義などを、今後の国会審議で語ってもらいたい。
首相は経済安全保障の強化も求めた。「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度を創設する法案の今国会での成立が欠かせない。
憲法改正では「条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速する」と明言した。今国会での改憲原案作成に向け、議論を主導してほしい。
安定的な皇位継承策については積極的な議論を重ねて促した。男系(父系)継承を貫く皇統を守るべく、指導力を発揮するときだ。
ただ首相は、改憲と皇位継承に関し「その他の先送りできない課題」と語った。「その他」扱いには違和感を覚える。
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2024年1月31日付産経新聞【主張】を転載しています
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