【主張】「適格性評価」法案 機微情報の活用を円滑に
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経済安全保障への対応を強化するための重要な一手である。
政府が、経済安保上の機微に触れる情報へのアクセスを官民の有資格者に限る「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度の創設を盛り込んだ新たな法案を閣議決定し、国会に提出した。
安保環境が厳しさを増す中で海外に流出すれば国民の安全が脅かされる経済情報が増えている。秘匿すべき政府内の情報を保全しつつ、これを官民で活用するのが新制度の狙いだ。
欧米と同様に制度を整えることは経済安保上の連携を深める上でも欠かせない。法案提出は妥当であり、与野党はこれを確実に成立させてもらいたい。
政府の重要経済安保情報保護・活用法案では、漏洩(ろうえい)すれば安保に「支障」を与えかねないため秘匿する必要がある情報を重要経済安保情報に指定する。サイバー攻撃や戦略技術の研究開発、重要インフラなどの関連情報が対象として想定される。
「著しい支障」を来すようなより機密性の高い情報は既存の特定秘密保護法の運用見直しで対応する。機微度を見極め、一貫性のある法体系として円滑に運用する必要がある。妥当性を欠く秘匿で国民の知る権利を侵してはならないのは当然だ。
指定情報を扱う資格は身辺調査を経て付与される。家族を含めたテロ・スパイ活動への関与や犯罪歴、薬物乱用、飲酒、借金などが調査項目だ。調査を受けるかどうかは本人の同意が前提である。
殊更にプライバシー侵害などをあげつらう批判には首肯できない。公務員だけではなく多くの民間人も調査を受けるとみられるが、国民の安全に関わる情報を扱う以上、適格性が厳しく問われるのはやむを得ない。
そもそも資格付与は、機微情報を扱う海外政府などのプロジェクトでビジネス機会を拡大したい民間側の要望を踏まえたものだ。制度に疑義が生じないよう官民が適切に運用し、実効性を高めることが肝要である。
積み残された課題もある。例えば政府保有だけではなく、民間にも重要インフラなどに機密性の高い情報があるが、これをどう保全するか。スパイ行為を仕掛けられる恐れのある異性との交遊など、多様なリスクへの調査は十分か。これらを不断に検討することも重要だ。
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2024年3月4日付産経新聞【主張】を転載しています
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