【主張】「カイロス」失敗 チャレンジの灯を消すな
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宇宙事業会社スペースワン(東京)は3月13日午前、小型固体燃料ロケット「カイロス」初号機を和歌山県串本町の発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げたが、発射直後に機体が爆発した。同社によると、飛行中断措置がとられた。
民間単独による国内初の人工衛星打ち上げを目指したが、搭載した政府の小型実証衛星の軌道投入はできなかった。
宇宙ビジネスでの国際市場参入を目指す日本にとっても、今回の失敗の痛手は大きい。しかし、日本の宇宙開発の持続的発展のために、官主導から官民の両輪への転換を図る歩みを止めてはならない。
今、最も大切なことは、チャレンジ(挑戦)の灯を消さないことである。
米国の宇宙開発の中核を担い衛星打ち上げ市場を席巻するスペースXも、失敗を繰り返しながら立ち上がり、成功にたどり着いた。
スペースワンは、世界的に需要の増加が見込まれる小型衛星の打ち上げで、低コストで衛星を宇宙に運ぶ「宇宙宅配便」の確立を目指して平成30年に設立された。
令和12年以降は年間30機の打ち上げを計画している。宇宙ビジネスでのシェア獲得に向け、民間を含めて年間30回程度の打ち上げを実現させたいとする政府の方針とも軌を一にする。
今回の打ち上げで、政府の小型実証衛星が搭載されたのは、官民が連携する姿勢を示すものといえる。
宇宙開発における日本の「民間の力」は、米国の宇宙ベンチャーに大きく水をあけられている。この差を縮めるには、宇宙分野の技術と人材の交流と連携を大幅に活性化し、緊密にする必要があるのではないか。
日本が初めて人工衛星「おおすみ」の打ち上げに成功したのは、昭和45年2月である。ソ連、米国、フランスに次ぐ4カ国目で、この2カ月後に中国が続いた。
当時に比べ技術は高度化しているが、民間の衛星打ち上げ技術が半世紀以上も前の段階にとどまっている現実は、重く受け止めなければならない。
官主導で培われた宇宙関連の技術をベンチャーに波及させる仕組みを構築する必要がある。カイロスの挑戦を、そのための一歩としたい。
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2024年3月14日付産経新聞【主張】を転載しています
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