【主張】北陸新幹線延伸 能登地震の復興に生かせ
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北陸新幹線の金沢―敦賀(福井県敦賀市)間が延伸開業した。整備計画の決定から半世紀を超えて東京―福井間が初めて直通し、北陸3県が新幹線で結ばれた。
経済効果は600億円に上るとも試算されるこの好機を、元日の能登半島地震の被災地復興に生かしたい。地元の自治体や民間だけでなく、国を挙げた創意工夫が必要だ。
東京―福井間は33分短縮されて最速で2時間51分、東京―敦賀間は最速3時間8分となり、片道3時間の「日帰り圏」となった。ビジネスや観光など、さまざまな人の往来の活発化が期待される。
開業日には、政府による被災地の観光振興支援「北陸応援割」も始まった。被災地側の負担を指摘する声もあるが、被災地支援という本来の目的を踏まえて活用されれば、新幹線延伸開業との相乗効果が生まれるだろう。一過性のブームに終わらせない取り組みも不可欠だ。
一方、金沢と大阪、名古屋を結んでいた特急列車は敦賀止まりとなり、金沢に向かうには北陸新幹線への乗り継ぎが必要になった。移動時間は大阪―金沢で22分短縮されて最速2時間9分となったが、料金は1620円高くなった。
ダイヤ上、最短の乗り換え時間は8分だが、1月にJR西日本が行った訓練では新幹線1編成分の乗客約900人が乗り換えに要した時間は12分を超えたという。利用者の目線に立った改善も必要だろう。
延伸に伴い、並行在来線(北陸線)約130キロの運営はJR西から石川、福井両県の第三セクターに移管された。人口減少が進む中、厳しい経営が見込まれている。地域の足をどう確保するか知恵を絞ってほしい。
昭和48年に整備計画が決定された北陸新幹線は、平成10年の長野冬季五輪に合わせて9年に東京―長野間が先行開業し、27年に金沢まで延伸した。国は京都府を経由した新大阪までの延伸を令和28年と想定するが、環境影響評価(アセスメント)の遅れの影響で着工のめどは立っていない。
北陸は「関西の奥座敷」と呼ばれて、関西圏と深く結びついてきた。その関西圏と直結することで北陸新幹線は完結する。費用やルートの見直しなど、柔軟な検討を始めてほしい。
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2024年3月21日付産経新聞【主張】を転載しています
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