柔道・井上康生氏「欧州に学ぶ生涯スポーツとしての柔道」
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ジャパンフォワード読者のみなさん、こんにちは。柔道家の井上康生です。
私の住む日本ではようやく寒さが緩み、春の陽射しが降り注ぐようになりました。皆さんのお住まいの土地ではいかがでしょうか。
さて今回は3月にヨーロッパ3カ国で行った柔道クリニックで感じたことをご報告したいと思います。
今回訪れたのは、フランスのニースとランス、ベルギーのロンメル、ドイツのケルン。クリニックはスポーツ用品メーカー・ミズノの主催により行われ、私は講師として参加しました。いずれの会場も大人を中心に300人ほどの参加者があり、盛況のうちに終えることができたと思います。
クリニックの内容は、内股を中心とする私自身が選手時代に培った技の解説や心の持ち方についての紹介です。ひとつのセッションは2〜3時間ほどだったのですが、参加者の皆さんには大変熱心に受講いただき、毎回あっという間に時間が過ぎてしまいました。
皆さんにはとても喜んでくださったのですが、私としてはもう少し時間があればもっと詳しくお伝えできるのに、と思う部分も多く、今回の内容であれば、できれば1会場につき3日間くらいは必要だったと感じました。それくらい皆さんとても熱心で、私自身も伝えたい内容が次から次へとあふれてくるような時間となりました。
各地で出会った生涯柔道を実践している人たち
今回は4つの会場を訪れましたが、印象に残ったことをひとつあげると、いずれの会場でも年齢が高い方の中に茶色帯や緑帯、黄色帯といった色帯を締めている人が多かったことです。
子どもの頃に少し柔道経験があるという方もいましたが、色帯を締めておられるということは、初心者、もしくは柔道を始めて数年ということです。ヨーロッパでは健康増進や日々を豊かに過ごすため、生涯スポーツの文化が根づいていますが、皆さんはまさに生涯スポーツとして柔道を選ばれたということだと思います。
もちろん、日本でも年齢を重ねてから柔道をはじめる方もいらっしゃいますが、それほど数は多くないでしょう。今回、色帯を締めている方たちの姿に接したことで、生涯スポーツの文化の浸透ぶりを目の当たりにしましたし、素晴らしいことだと思いました。そして、我々柔道関係者がヨーロッパから学ぶことはたくさんあると思いました。
このように今回の訪問は講師として招いてはいただきましたが、私としては逆にいろいろなことを学び、経験させていただく貴重な時間になりました。訪れた国は国境を接してはいるものの、それぞれに文化や慣習が異なり、当然ですがお国柄の違いを感じる場面も多々ありました。しかしながら、どこの会場でも柔道によって一体となり、たくさんの方と楽しい時間を過ごすことができたことは、スポーツの持つ力であり、価値であることを再確認しました。
今後もこうした機会があれば、できる限り参加させていただきたいと思っています。現地でお世話になった皆さま、ありがとうございました。
筆者:井上康生
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