【主張】台湾包囲の演習 中国は粗暴な行動を慎め
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中国軍が台湾周辺で大規模な軍事演習を行った。台湾の頼清徳総統の就任式が5月20日にあった直後の狼藉(ろうぜき)だ。
台湾本島を取り囲む形で軍を展開しただけでなく、中国大陸に近接する金門島や馬祖島周辺でも実施した。中国軍東部戦区は「『台湾独立』分裂勢力による独立を画策する行為への強力な懲戒」とする報道官談話を出した。
だが、頼政権は対中関係について現状維持を掲げ、対話を求めている。中国による台湾の人々への軍事的威嚇は決して認められない。
米高官が「通常の政権移行を挑発的、威圧的な措置の口実に使うべきではない」と中国を批判したのはその通りだ。
今回の演習には陸海空軍や、核ミサイルを管轄するロケット軍が参加した。中央軍事委員会傘下の中国海警局も動員した。頼氏の総統就任に合わせ、「台湾封鎖」の示威行動を準備していた様子がうかがえる。
軍事演習で圧力を公然とかける粗暴な振る舞いを、中国は繰り返してきた。2022年のペロシ米下院議長(当時)訪台や昨年4月の蔡英文総統(同)の米国訪問などの際もそうだ。
22年の演習では日本の排他的経済水域(EEZ)内にも弾道ミサイルを撃ち込んだ。これでは北朝鮮とどこが違うのか。
台湾海峡の平和と安定を維持するため、日本が米国やオーストラリアなどの有志国と連携し、抑止力の強化を図る必要性はますます高まった。
日本では、中国の呉江浩駐日大使が台湾問題をめぐり、「日本の民衆が火の中に連れ込まれる」と発言したことが問題視されている。呉氏の発言撤回と謝罪があって然(しか)るべきだが、中国外務省報道官は「事実に基づいており、完全に正当で必要なものだ」と擁護した。
中国軍が日本国民を攻撃して殺傷するという脅迫を「完全に正当」とする中国政府は異常である。これまた、北朝鮮とそっくりではないか。
27日に韓国・ソウルで日中韓首脳会談がある。岸田文雄首相と中国の李強首相の2者会談も予定されているが、中国側の誠意ある対応が期待できないなら会う意味はない。日中韓首脳会談では、岸田首相は「台湾海峡の平和と安定」を乱す軍事演習と呉大使の暴言をはっきり断罪しなければならない。
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2024年5月25日付産経新聞【主張】を転載しています
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