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シャープ、AI向けデータセンター構築へ 液晶工場の跡地活用 生成AI拡大の波に乗れるか

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シャープ本社(手前)と堺ディスプレイプロダクト=4月28日、堺市(共同)

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シャープ、KDDI、人工知能(AI)システム受託開発のデータセクションなどの日米4社がAI向けデータセンター構築へ協議を始めることで合意したことが3日、明らかになった。使用するのは、シャープが9月までに生産を停止する液晶パネル工場「堺ディスプレイプロダクト(SDP)」(堺市)の跡地。同社は、かつて最先端だったが需要低迷で経営悪化の元凶となった液晶事業から、市場の急拡大が見込める生成AIに狙いを切り替え、自社の再浮上を狙う。

 

米オープンAIの「チャットGPT」、グーグルの「ジェミニ」…。

 

これらの対話型生成AIが基盤とするのは、膨大な文章データを学習した「大規模言語モデル」。自然な文章の作成や要約、対話は学習によって可能となる。その学習に必要なのが、大量のサーバーを設置したデータセンターだ。

 

SDPの跡地につくるAI向けデータセンターは、完成すればアジア最大規模となる。

 

サーバーは、合意したうちの1社である米サーバー大手、スーパー・マイクロ・コンピューターから調達。米半導体大手エヌビディア製の画像処理装置(GPU)の新製品「Blackwell(ブラックウェル)」などを搭載する。調達数は1千台規模となる。

 

ブラックウェルは前世代品と比べ電力効率が最大25倍になるなど、性能が飛躍的に向上した。

 

それでも運用には大規模な電力が必要だが、既存設備があるSDPの跡地につくることで十分な電力の確保が見込めるという。生成AI市場は急速な拡大が予測される。シャープはこれを取り込み、再浮上の追い風としたい考えだ。

 

グリーンフロント堺内の「シャープ」「堺ディスプレイプロダクト」の建物外観 =2016年4月2日、堺市堺区 (竹川禎一郎撮影)

 

シャープはSDPを通じ液晶事業で利益拡大を追求したが、需要の変化を見誤り失敗した。SDPの建設は平成21年。その呉、液晶の需要減や中国・韓国勢との競争激化で収益性が悪化し、シャープは段階的にSDP株を売却したが、28年、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収された。

 

令和4年に鴻海の主導でSDPを再子会社化するとシャープは再び赤字に転落。今年5月14日の決算会見でSDPの稼働停止を発表し、AI向けデータセンターに転用する方針を示した。シャープは「急増するAI処理に対応できるデータセンターの構築が求められている」とする。

 

SDPは液晶事業で真価を発揮することなく幕を閉じることになった。AI向けデータセンターへと姿を変え、次こそは需要をつかめるのか注目される。

 

筆者:桑島浩任(産経新聞)

 

 

大規模データセンター安全保障にも意義 長内厚・早大大学院教授

 

早稲田大大学院の長内厚教授(本人提供)

 

シャープは液晶で成長したが、経営資源を一つの技術に集中させたことで、(需要の縮小や価格競争という)環境変化に対応できなかった。その意味で、同社が生成人工知能(AI)という新しい技術分野に事業を転換するなら評価できる。同社の通信関連の技術をデータセンターの運営と融合させれば、相乗効果が見込める。

 

生成AIの市場は国内でも成長が見込まれる。扱うデータを他国のサーバーに預けるのではなく、国内で大きなデータセンターを持っておくことは、国の安全保障のうえで意義がある。

 

データセンターはサーバー同士で情報を転送する際の遅延が発生するとサービスの質が低下するので、サーバー間の連係が重要。そのために1カ所に広大なセンターを置く方が有利だ。今回はAIのデータセンターとしてアジア最大規模になるとのことだが、(広さの面で)立地場所としてもふさわしい。

 

同社は当初の液晶事業のように、他社がやらないことをやる点が強みだった。今度は生成AIの分野で新しい提案をしていくことを期待したい。

 

聞き手:牛島要平(産経新聞)

 

 

生成AI市場 2030年までに1367億ドルへ

 

コンテンツ生成や言語翻訳、チャットボットなど、さまざまな用途で活用されている生成AI。5月に対話型AI「チャットGPT」の最新版言語モデル「GPT-4o(オー)」が発表され、音声によるスムーズな対話も可能になった。米グーグルの「ジェミニ」も高速で軽量なモデルが発表されるなど、生成AIの機能や用途は驚く速さで拡大している。

 

それに伴い、生成AI市場も急速な拡大が予測されている。調査会社のグローバルインフォメーションとマーケッツアンドマーケッツの試算によると、世界の生成AIの市場規模は、2024年の209億ドル(約3兆2800億円)から30年までに約6・5倍の1367億ドルに成長すると予測される。企業が顧客へのサービス提供や分析で生成AIへの依存度を高めることで、市場の成長を促進するという。

 

誰もが簡単に生成AIを利用できるようになる一方で、偽情報の拡散や人権侵害などが世界的に懸念され、各国で規制の動きが広まっている。

 

欧州連合(EU)では5月、世界初の包括的なAI規制法が成立した。企業に生成AIでつくった画像の明示を義務付けるなどし、違反には巨額の制裁金を科す。米国でも昨年10月、一部のAI開発企業に安全性の報告を義務付けるなどの大統領令が発令された。

 

一方、日本では今年4月、政府が関連事業者向けのAIガイドラインを公表したが、法的拘束力はなかった。このため5月22日、有識者らの会議を開き、生成AIの安全性確保のための法規制導入へ向けた議論を始めた。主に大規模なAI開発事業者を対象に、法規制の導入の是非や具体的な内容を検討する。

 

筆者:桑島浩任、牛島要平(産経新聞)

 

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