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【主張】安倍氏暗殺2年 自民は保守の矜持失うな 総裁選が再生の最後の機会だ

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安倍晋三元首相の銃撃から2年となり、現場で発生時刻に合わせて、黙とうする人ら=7月8日午前、奈良市(渡辺恭晃撮影)

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安倍晋三元首相が、参院選の街頭演説中にテロリストの凶弾に倒れてから7月8日で2年になる。改めて心から追悼の意を表したい。

 

憲政史上最長の通算8年8カ月にわたって首相を務めた安倍氏は保守の立場から多くの治績をあげた。現役政治家として一層の活躍が期待された安倍氏を失ったことは痛恨事である。

 

暴力で政治家の生命を奪い、言論を封じる暗殺は民主主義への挑戦である。絶対に認められず、産経新聞は最大限の言葉で非難する。

 

安倍晋三元首相の三回忌の法要が地元・山口県長門市の長安寺で営まれ、妻の昭恵さん(右)ら約50人が参列した=7月8日午前、山口県長門市(千田恒弥撮影)

 

改めて追悼の誠捧げる

 

にもかかわらず、テロリストの山上徹也被告を礼賛する言説が散見されることを深く憂慮する。テロリストの卑劣な犯行を肯定しては次なるテロを生む。決して許してはならない。

 

折しも7日は東京都知事選の投票日だ。自民党総裁選や衆院選など重要選挙も控えている。最大限の警戒が欠かせない。

 

米大統領選ではトランプ前大統領勝利の可能性が増したようにもみえる。トランプ氏と盟友関係にあった安倍氏が健在ならと思う人は多いだろう。

 

だが、安倍政治の価値はトランプ政権との関係にとどまらない。安倍氏が批判を恐れず、日本や世界にとって望ましい国際秩序、環境をつくろうと内外で能動的に働いた点にこそ真価があった。

 

「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を掲げ、国際秩序を乱す中国を抑止していく概念として国際社会に定着させた。自由貿易の擁護者として各国首脳から信頼された。

 

事件現場付近に設けられた献花台に花を手向け、手を合わせる人ら=7日午前、奈良市(甘利慈撮影)

 

左派・リベラル勢力の猛反発を覚悟のうえで、安倍氏は憲法解釈を改め、安全保障関連法を制定し、限定的ながら集団的自衛権行使に道を開いた。日米は守り合う関係になり、同盟の絆と抑止力は格段に高まった。安倍氏の決断なしでは、台湾有事の危機や北朝鮮の核・ミサイル問題を前に日本は立ち往生していただろう。それは日本経済にも打撃を与えたに違いない。

 

岸田文雄首相は、ウクライナ侵略を機に転換した対露政策を除き、安倍氏の外交安保路線を受け継ぎ、前進を図っている。国家安保戦略など安保3文書の改定や防衛力の抜本的強化などがそれに当たる。これは高く評価されて然(しか)るべきだ。

 

参院政治改革特別委員会で答弁に臨む岸田文雄首相=6月18日午後、国会(春名中撮影)

 

一方で、岸田政権は支持率低迷の苦境にあえいでいる。安倍氏暗殺に端を発した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題や、安倍派(清和政策研究会)などのパーティー収入不記載事件はその一因だ。だが根深い原因はほかにある。

 

それは、岸田首相や自民が保守の矜持(きょうじ)を失ったのではないかと見られていることと、左派・リベラル勢力の反発が予想されても現代日本にとり重要な課題を確実に前進させる姿を示していないことの2点である。

 

 

2つの理由で低迷した

 

LGBTなど性的少数者への理解増進法は土壇場で問題点の修正が施されたとはいえ、自民が安易に推進したことで国民の不安を増幅させた。女性だと自認する男性が女性専用スペースに入ることを正当化するのに用いられかねない危険がある。

 

自民は選択的夫婦別姓について党内論議を3年ぶりに再開するという。経団連の早期導入提言を受けての対応だが、「選択的」といっても家族や社会のありように関わる。導入されれば子供はどちらかの親と別姓になり、家族の一体感は損なわれよう。戸籍でも、家族の呼称としての姓が砂粒のような個人の呼称へ変質していく。

 

最高裁判決にあるように、国の伝統や国民感情を含め総合的な判断で定められるべき事柄だ。分断の種をまくような問題にかまけることは保守にふさわしくないと自民は気付くべきである。

 

日本国憲法の原本(国立公文書館蔵)

 

国の根幹をなす2つの課題が遅々として進まない点も問題だ。皇位の安定継承に向けた皇族数確保と憲法改正である。

 

これらは、通常国会の会期を延長して正面から取り組むべきだった。どちらも閉会中でも論議を進めるというが、本当なのか。岸田首相(自民総裁)や自民は掛け声だけでないことを行動で示してもらいたい。

 

内閣支持率も自民支持率も反転上昇の兆しはない。9月の自民総裁選は党再生の最後の機会といえる。名乗りを上げる議員は保守の精神を失わず、日本のかじ取りを語ってもらいたい。安倍氏を超える治績を目指そうという気概が必要である。

 

 

2024年7月7日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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