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流れるカーテン…先人の知恵 竹田の水利施設(大分県竹田市)

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日本一美しいダムといわれる白水ダム=大分県竹田市(恵守乾撮影)Kan Emori ※立ち入り禁止区域から特別な許可を得て撮影

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新緑に囲まれた山中からザーという音が響き、あふれ出た水がうろこ状の波紋を描いて流れ落ちる。日本一美しいダムといわれる「白水ダム」。正式には「白水溜池堰堤(えんてい)水利施設」といい、農業に欠かせない豊富な水を田畑に届ける。

 

ため池や円形分水など古くからの水利施設が数多く残る大分県竹田市を訪ね、水にまつわる先人たちの知恵に触れた。

 

日本一美しいダムといわれる「白水ダム」。水が流れ落ちるさまはレースのカーテンのようだ=大分県竹田市(恵守乾撮影)

 

白水ダムは、農業用水の不足を解消するため昭和13年に造られた。右岸はなめらかな曲面、左岸は階段という独特の構造は、水圧の分散ともろい地質に対応するためという。

 

90年近い時を経てもなお、保水力と曲線美を兼ね備えたその姿は当時の技術の高さを示す。「左岸側で切り出した凝灰岩を積み上げて造られたそうです」と、話すのは、施設を管理する富士緒井路(ふじおいろ)土地改良区事務局長の岡部鎮宏(しげひろ)さん(59)。

 

平成11年には国指定重要文化財に指定されている。

 

次に訪ねたのは「音無井路(おとなしいろ)十二号分水」。灌漑(かんがい)用水路の音無井路の水流を3カ所に分配するため昭和9年に造られた。

 

音無井路十二号分水。こんこんと流れる水を3つに分配し、地域の農業を支える=大分県竹田市(恵守乾撮影)

 

直径6.4メートルの円筒に設けられた20個の「水窓」から絶え間なく水が噴き出し、3つの水路に注がれる。十二号分水の完成により、それまで頻発していた水争いは沈静化したという。

 

昭和59年に石造りからコンクリート製に改修されたが、形状は建造当時のままだ。

 

「水は農家の魂なり」。十二号分水の歴史を伝える説明板の文末にはこう記されている。

 

若宮井路笹無田石拱橋。JR豊肥線が並行する=大分県竹田市(恵守乾撮影)

 

蔦(つた)の絡まる2連アーチ橋が、JR豊肥線の鉄橋を見下ろすようにそびえ立つ「若宮井路笹無田石拱橋(わかみやいろささむたせっこうきょう)」。若宮井路の水を運ぶ長さ59メートル、幅4メートルの水路橋だ。大正5年に一度は完成するも直後に崩壊し、現在の橋は翌年に再建された。

 

若宮井路笹無田石拱橋。JR豊肥線が並行する=大分県竹田市(恵守乾撮影)

 

地域農業の近代化と収穫量増加。竹田に残る水利施設の数々は、先人たちの情熱と苦難を今に伝える。

 

 

筆者:恵守乾(産経新聞写真報道局)

 

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